「キリストの幕屋」とは?

「都政を革新する会」
『研究:ネット右翼と嫌韓流』より
 
 
第3回 キリストの幕屋とは?
 

 靖国神社で戦前、兵士は死を決意させられ、財閥のための戦争で殺し殺されていった。小泉首相は05年10月に姑息にも拝殿を避けながら参拝を強行した。
 

  1. 「つくる会」「日本会議」を牛耳るカルト的・宗教的右翼団体

 前回、「つくる会」にしても、この「つくる会」ときわめて密接な関係にある全国的な改憲右翼組織「日本会議」(旧「日本を守る国民会議」)にしても、「実際の会員のかなりの部分が特定の諸団体の構成員によって占められている」と指摘しました。そして、その「特定の諸団体」とは「統一教会であり、生長の家であり、キリストの幕屋であり、さらに神道系の諸団体などで」あり、「これらはすべて、宗教の装いをとったカルト的右翼団体」と書きました。 

 事実、「日本会議」理事長で明治神宮崇敬会理事長の戸澤眞氏は勝共連合の元顧問ですし、上田埼玉県知事が県教育委員就任を要請した高橋史朗氏(明星大学教授 つくる会副会長)は、生長の家青年部=日本青年協議会の共同創設者で、統一教会のイデオローグです。高橋史朗氏は、「つくる会」と「日本会議」が共同で03年1月に「日本の教育改革」有識者懇談会(民間教育臨調)を結成する際に中心的役割を果たし、発足後は運営委員長をつとめました。また、生長の家青年部=日本青年協議会の現代表・服部守孝氏は「つくる会愛知」代表であり、「救う会」(「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」)の愛知代表でもあります。

 杉並区教育委員会において「つくる会」歴史教科書の採択に最も中心的な役割を果たした大蔵雄之助氏も、勝共連合=統一教会の新聞『世界日報』に主筆格で繰り返し執筆してきた経歴の持ち主です。

 このように、「つくる会」にしても「日本会議」にしても実際には、宗教の装いをとったカルト的右翼団体がそのかなりの実体を占めています。

 今回は、その中でも次第にその存在と影響力を拡大しつつあると言われる、キリストの幕屋についてもう少し詳しく見てみましょう。
 

  1. 「つくる会」が講演すると、その団体が動員される

 03年の1月26日に、東京の砂防会館において1200人を集めて、上でふれた「日本の教育改革」有識者懇談会(民間教育臨調)の設立集会が開かれました。これについて、日本の戦争責任資料センター事務局長の上杉聰(さとし)氏は、直後に発表した「日本における『宗教右翼』の台頭と『つくる会』『日本会議』」と題する論文の中で、次のように分析しています(以下、教科書情報資料センターのホームページより引用)。
 

〔高橋史朗氏らこの団体の役員に名を連ねている顔ぶれなどから、この集会が「つくる会」と密接にかかわりあっていることを指摘したうえで〕結論から述べるならば、私の確認し得たところによると、〔この集会の〕裏の事務局は「日本会議」が仕切り、役員の選定はすべて同会議の専従職員が交渉し、当日の聴衆には関東の宗教団体を組織動員したというのである。…

 26日の聴衆のうち女性は全体の約3割を占めていたが、その半数ないしそれ以上が、異様な髪形をした〔髪を長くして三つ編みにしそれを頭にまきつける〕女性たちであったことが複数の参加者から報告されている。彼女たちは日本会議の有力な構成団体であるキリストの幕屋と呼ばれる宗教団体のメンバーであることが、その容姿から確認できる。…
 

 
 日本会議とは、すでに述べたように、1997年に「日本を守る会」と「日本を守る国民会議」が合体して結成されたのだが、「国民会議」は、なんといっても右翼文化人を中心としつつ旧軍関係者とも共闘する組織であった。ところが「守る会」の方は、神社本庁・生長の家・仏所護念会・念法真教・モラロジーなど宗教・修養団体が中心となり、そこに曹洞宗管長・日蓮宗管長なども名前を連ねる宗教関係者中心の団体であった。…

 日本会議の結成は、文化人中心の「国民会議」(実際には右翼的政治団体もいた)が、献身的で巨大な財政力・組織力・動員力を持つ宗教団体連合の「守る会」と合体することにより、国民動員的な巨大組織を目指したものであった。… 

 とくに「つくる会」の結成から一昨年〔01年〕の採択戦までは幅広く文化人が加わり、保守的市民層にある程度の支持を広げてきたが、小林よしのりが藤岡信勝に追われるようにして脱会したことなどにより、「つくる会」は現在、日本会議にいっそう頼らざるを得ない状況に陥っている。…

 
 小林氏にしてみれば藤岡氏に「追われるようにして脱会した」かどうかは異論があるところかもしれません。それはともかく、かつては「つくる会」の宣伝係として大いに名をはせ、また「つくる会」歴史教科書執筆者の1人でもあった漫画家の小林よしのり氏は、キリストの幕屋について次のように語っています。

 以下は、みずから編集する雑誌『わしズム』vol.17(03年7月刊)からの引用です。
 

 「つくる会」の中に、ある宗教団体が入り込んでいます。入り込んでるという言い方は失礼かな。「つくる会」の人が運動を進める上で、ある宗教団体を入れたのですね。その宗教団体というのはユダヤ教が母体です。それがあの会を支持している。だから、「つくる会」がシンポジウムや講演を主催すると、その団体が動員されます。当初わしは、それは穏やかな団体だと思っていました。それでもわしは一度だけ、「つくる会」内部で問題にしたことがありました。「大丈夫なのか」と。

 そうしたら西尾幹二さん〔「つくる会」初代会長で現名誉会長、歴史教科書執筆者〕が「あそこは日本の国家を考えた団体だ」と説明しました。西尾さんがいうのだから大丈夫なのだろうとわしは思いました。…… 

 ところが、『つくる会』が内部に、その宗教団体を抱える矛盾が、そのシンポジウムで噴出しました。なぜか。その団体はユダヤ教が母体で、ユダヤ教といえばイスラエル支持です。イスラエルは当然アメリカが後ろに控えている。わしはアラブとイスラエルどちらの側にも立つ気もありません。非常に複雑な、根の深い問題がある。けれど、圧倒的にイスラエル支持の立場をとるその団体は、『つくる会』の内部でも、わしに対して猛烈な憎悪を持ってくってかかってきました。壇上で、わしが話しをしている間、延々と野次がやまない。野次を飛ばす男は、その宗教団体の人で、同時に「つくる会」の東京支部長でした。また会場の整理係もその団体の人たちがやっていて、みなが「反・小林」で一致し、わしの発言を妨害しました。

 

  1. キリストの幕屋 ―― その教義と実践
  • キリストの幕屋、正式団体名は「宗教法人 原始福音・キリストの幕屋」
  • 1948年に、聖書研究会を開いていた手島郁郎(てしまいくろう 1910~1973)氏が進駐軍に抵抗したため追われる身となり、阿蘇山に潜伏中、神の召命を受けて伝道を始めたとされている。1961年に宗教法人になる。現在の代表は手島千代子氏。支部は海外を含め約90カ所
  • 聖典・教典:旧約聖書、新約聖書
  • 機関誌:『生命の光』(バス停などにつるされている)
  • 崇拝対象: 唯一絶対神(ユダヤ教・キリスト教)およびイエス・キリスト

 
■ 凶暴な超軍事国家イスラエルを崇拝


(写真 イスラエル軍によるジェニンの大虐殺で完全に破壊されたパレスチナ人難民キャンプ【02年4月】)

 教団名に「キリスト」の文字が入っていながら、本人たちはキリスト教の一派ではないと明言。また、既成のキリスト教派と違ってユダヤ民族の信仰であるユダヤ教にも重きをおいているところが一つの特徴。

 手島氏は、生前にはイスラエルのユダヤ教関係者とも親交をもち、信徒とともに「聖地巡礼」(ユダヤ教・キリスト教の聖地としてのエルサレムへの訪問)をおこなっています。幕屋では、キリスト教の原点となるユダヤ民族の歴史ばかりか現在のイスラエルの国家とその文化についても重視しており、「聖地巡礼」・「聖地留学」を大事な信仰活動の一部ととらえています。そのため、日本におけるイスラエル・ロビーとしての役割を果たしていると見られています。

 キリストの幕屋の信者たちの「つくる会」運動への取り組みの異様なまでの熱心さは有名です。彼らは講演会やシンポジウムに全力で参加するのはもちろん、「つくる会」には家族全員が入会すると言われています。

 とくに副会長で歴史教科書執筆者の藤岡信勝氏とは密接なつながりをもち、講師として積極的に呼んでは全国で講演会をおこなってきました。


(写真 キリストの幕屋がばらまいた西尾幹二著『国民の歴史』)

 また、01年の教科書採択を前にして、西尾幹二氏著の歴史教科書『国民の歴史』を信者が自腹で何十冊も購入し、議員や企業役員、あるいは近所の人などだれかれかまわず配ったり送りつけたりして、「つくる会」内部でも物議をかもしました。

 2002年、愛媛県の中高一貫校に「つくる会」教科書を採択させる運動の際には、「直前に『つくる会』が全国から組織動員し、各戸ビラ入れをおこなったほか、松山市街にも200人近い集団を登場させ、宣伝活動をおこなった。大半はキリストの幕屋であると言われる」と先に引用した上杉論文は指摘しています。

 幕屋は、戦争動員施設=靖国神社への参拝にもきわめて積極的に取り組んでいます。彼らは「拝殿の前で最敬礼し、心からの感謝をご霊前に捧げる。グループで参拝する時は祈り、賛美歌を歌う」(大阪キリストの幕屋主事・神藤耀氏)そうです。そして、首相・閣僚の公式参拝の実現を強く要求しています。
 
 彼らは「古事記」「日本書紀」の神話を「日本建国の歴史」として信奉し、それを「イスラエルが旧約聖書を建国のよりどころにしている」ことになぞらえています。

 ところで、聖書の世界から遠く隔たった現在のイスラエルは、アメリカが戦後直後、その中東支配・中東石油支配のために人工的に形成した半植民地国家であり、アメリカの強力な支援をバックにパレスチナ人にたいする虐殺と迫害を繰り返しているきわめて反人民的な超軍事国家です。そのようなアメリカの半植民地的軍事国家を崇拝しているところにも、幕屋のきわめて反動的本質がはっきりとあらわれています。
 
 
■ 強烈な民族主義と反民主主義

 幕屋は彼らの信仰の根本をなす「我らの信条」の第一で次のように宣言しています。

 「私たちは、日本の精神的荒廃を嘆き、大和魂の振起を願う」。普通のキリスト教関係とはちょっと結びつきにくい「信条」です。

 また、彼らが創始者・手島郁郎氏の言葉として掲げている文章の中に次のようなものがあります。以下、幕屋のホームページ内の「戦後教育の誤り」からの引用です。
 

 終戦直後のことですが、進駐軍の軍政官、その他が日本の学校教育を指導しました。そして、「日本が戦争を起こしたりするのは、戦前の教育が悪かったのだ。『末は博士か大臣、大将か』という考えが間違っている。民主主義の時代において、大事なことは、みんなが平凡で善良な市民になることである」。このような教育目標をかかげて徹底的に指導しました。…

 しかし、このような誤った戦後の民主主義の教育というものが、今の全学連の騒ぎに発展していったのだ、と私は睨んでおります。民主主義教育というものは、立派な人間をつくりません。…私は聖書を深く読めば読むほど、民主主義というものには反対です。…

 神に聴いて政治が行なわれることが理想です。愚かな人間がただ寄り集まって、その多数決で決めてゆくような政治社会が良い社会だとは思えません。…

 
 何らかの活動をしている人が特定の宗教の信者であることや、その宗教団体の活動が見た目風変わりなものであること、それ自体はなんら非難する理由にはあたりません。また、信仰の問題は心の問題として、その人の内心の自由です。

 しかし、キリストの幕屋は明らかに「宗教の装いをとった右翼団体」と呼ぶにふさわしい教義内容をもち、そればかりか他の反動的・右翼的諸団体とも連携して「つくる会」運動など政治的活動を組織的・積極的に実践しています。

 彼らはキリスト教的な言辞をあやつりながら、実際には強烈な民族主義的・反民主主義的主張を叫び、「法の下での平等」や「教育の機会均等」といった戦後民主主義的価値観への憎悪をかき立てつつ反動的政治活動をおこなう、宗教の形態をとった極右ファシスト集団にほかなりません。
 
 
■ 「つくる会」運動の構造

 八木秀次氏や藤岡信勝氏、そして西尾幹二氏を代表人格とする「つくる会」は、これまで見てきたように、実際にはキリストの幕屋や統一教会、そして生長の家など宗教の形態をとった極右ファシスト集団実働部隊として展開されています。

 そして重要なことは、この運動が、いまや小泉首相や奥田日本経団連会長など日本の帝国主義(独占的な大企業・大銀行とその政治的代表者による支配体制)の中枢によって全面的にバックアップされているということです。

 「つくる会」運動の内実と全体像はだいたい以上のようなものです。そして、その中にネット右翼も独自の位置と役割をもって登場してきました。次回はいよいよ、この問題について考えてみましょう。

(by 深見 潔)
 
 

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