『ツワネ原則』

 本原則は、国家安全保障上の理由により情報の公開を控えたり、そのような情報の暴露を処罰したりする国家の権限に関わる法津又は規定の起草、修正又は施行に携わる人々に指針を提供するために作成された。
 
 本原則は、国際法(世界の一部地域のみを対象とする国際法を含む)及び国内法、各種の基準、優れた実践並びに専門家の論文等に基づいている。
 
 本原則は、国家安全保障上の理由による情報非公開について記述しており、他のあらゆる非公開理由を対象としたものではない。しかし他の理由で情報へのアクセスを制限する場合でも、当局は少なくともこの原則に示された基準を満たさねばならない。
 
 本原則は、70ヶ国以上の500人を超える専門家との協議を経て、22の組織及び学術センター(付録にそのリストが記載されている)によって起草された。会議はオープン・ソサエティー・ジャスティス・イニシアティブが進行役を務めて世界各地で14回にわたって行われ、表現 / メディアの自由に関する特別報告者4名、及びテロ対策と人権に関する特別報告者1名からも意見を得た。この5名の特別報告者は以下の通り。

フランク・ラ・リュ:言論と表現の自由に関する国連特別報告者
ベン・エマソン:テロ対策と人権に関する国連特別報告者
パンジー・トゥラクラ:表現の自由と情報へのアクセスに関する人及び人民の権利に関するアフリカ委員会特別報告者
カタリナ・ボテロ:表現の自由に関する米州機構特別報告者
ドゥニャ・ミヤトビッチ:メディアの自由に関する欧州安全保障協力機構(OSCE)代表

 
本原則が起草された背景と理論的根拠

 国家安全保障と国民の知る権利は、しばしば対立するものとみなされる。政府は国家安全保障上の理由から情報を秘密にしておきたいと望み、一方で国民には公権力が保有する情報に対する権利がある。この二つの事柄の間には、時として緊張関係が存在する。しかしくもりのない目で近年の歴史を振り返ると、正当な国家安全保障上の利益が最大に保護されるのは、実際には、国の安全を守るためになされたものを含めた国家の行為について、国民が十分に知らされている場合だということがわかる。
 
 国家の行為を国民が監視することができ、情報にアク セスすることができるようになれば、公務員の職権乱用を防ぐだけでなく、人々が国の方針決定に関与できるようになる。つまり情報へのアクセスは、真の国家安全保障民主的参加健全な政策決定の極めて重要な構成要素である。そして、人権の行使が完全に保障されるためには、ある一定の状況下では、正当な国家安全保障上の利益を守るために情報を秘密にすることが必要な場合があり得る。

 多くの国において、ひとたび国家安全保障が持ち出されると、司法は政府の主張に対して極めて従順になり、独立性をほとんど失ってしまうという事実があり、このことが、国家安全保障と国民の知る権利のバランスを正しく保つことをますます困難にしている。国の安全に対するほんのわずかな脅威の提示や、脅威があるという政府の単なる主張があれば、情報への権利や、通常の証拠規則や被告人の権利に例外を設ける治安法を持つ国が多く、そのような法律も 政府への追従に拍車をかけている。国の安全が脅かされていると政府が過剰に主張すれば、政府の暴走を防ぐために作られた主なしくみ(裁判所の独立法の支配立法府による監視メディアの自由開かれた政府)の機能を大幅に損ねてしまうおそれがある。

 本原則は、上述したような積年の難題に応えるものであり、また、近年かなり多くの国が、情報の非公開制度とその関連法を作成・修正し始めているという現実に対応するものである。一方このような政府の動きには、いくつかの理由がある。もっとも大きな理由は、ベルリンの壁の崩壊以降、情報へのアクセスに関する法律の制定が急速に進んできていることだろう。その結果、この原則が発表された時点で、95ヶ国の52億を超える人々が(実際にはそうでなくても、少なくとも法律上では)情報にアクセスする権利を持っている。こうした国の人々は、情報が秘密にされてよいか、あるいは、どのような状況下なら情報が秘密にされてもよいかという問題に(大抵の場合、初めて)取り組んでいる。他にも、ますます多くの国で秘密保護法が起草されている理由としては、政府によるテロやテロの脅威への対策、そして民主主義への移行過程で、秘密主義を法律で規制することへの関心が高まったことなどがある。
 

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