『ツワネ原則』-第4章

 
国家安全保障と情報への権利の司法的側面
 

原則 27:
司法による監視についての一般原則
(a) 法によって定められた、正当で、独立した、公平な法廷による公正な裁判を受ける基本的な権利は、国家安全保障が持ち出されてもこれに依拠して損なわれてはならない。
(b) 公的機関が国家安全保障を理由に、いずれかの法的手続きに則って、情報の非開示を試みた場合、裁判所にはその情報を調査し、非開示にして良いかどうかを決定する権限が与えられるべきである。裁判所は通常、情報を調べることなく、異議申立を退けるべきではない。
注記:裁判所は原則4を踏まえて、秘匿の必要性のみを主張しながらその主張を支える根拠を述べていない要約書や宣誓供述書に依拠すべきではない。
(c) 裁判所は、情報の入手を試みる個人が、可能である最大限の範囲で、政府によって提出されたその情報の非開示申請について知り、異議を申し立てられることを保障するべきである。
(d) 裁判所は、公的機関による主張の適法性及び妥当性について裁定を下すべきであり、その上で情報を開示するよう強制し、部分的又は全体的な非開示となった場合には、刑事訴訟における訴えの棄却を含む、適切な救済を行うことができる。
(e) 裁判所は、公的機関が情報非開示に対して援用する根拠が適正であるか、独立的に評価するべきである。情報開示請求に関しては、情報が機密扱いであることが決定的な問題だとされてはならない。同様に裁判所は、公的機関が主張する損害の性質と、 損害が起こる可能性、そして情報を開示した場合の公共の利益について、原則3に従って評価しなければならない。

 

原則 28:
訴訟手続へのパブリック・アクセス
(a) 公衆が訴訟手続へアクセスする基本的な権利は、国家安全保障が持ち出されてもこれに依拠して損なわれてはならない。
(b) 判決文は、裁判所による全ての命令を明記し、重要な事実認定と証拠と法的推論を記載し、18歳未満の子どもの利害に関わる場合を除き、公開されるべきである。
注記:国際法によれば、国家安全保障を理由に判決を公に発表する義務を軽減させることは許されない。
少年裁判所の裁判手続の記録は公開されるべきではない。その他の、子どもが関わる訴訟手続の記録は通常、18歳未満の子どもの名前と、身元の特定につながるその他の情報が修正されるべきである。
(c) 公衆が司法にアクセスする権利は、この権利の縮小が本原則に従い正当化される場合を除き、次に述べるものへ公衆が速やかにアクセスできることを含むべきである。(i)裁判における法的推論(ii)個々の裁判の存在と、その経過に関する情報(iii)法廷に提出された意見書(iv)法廷審問と対審(v)裁判手続の中で有罪判決の根拠となった証拠。
注記:公正な裁判の要件に関する国際法によれば、裁判所は次の様な場合には、部分的又は完全に公衆を審判から排除することができる。すなわち、民主主義社会における国家安全保障・倫理・公の秩序・裁判の当事者の私生活における利害を理由とする場合 、又は法的公正さが損なわれることを回避する場合である。ただしあらゆる案件において、このような制限が行われる場合には、その必要があり、且つ必要の程度に対応していることが条件である。
(d) 国家安全保障を理由として、公衆の訴訟手続へのアクセスの制限が絶対に必要だとする、公的機関によって発せられるあら ゆる主張に対して、公衆は異議を申し立てる機会を有するべきである。
(e) 裁判所が、訴訟手続への自由なアクセスの制限を承認するかどうかについて裁定を下す場合、原則3に則り、特殊な状況下にある場合を除いて、裁判所は書面により事実(具体的な根拠と法的分析)を公的に入手できるようにすべきである。
注記:本原則は、ある国家における、通常は公衆がアクセスできない準備手続について規定している現行法の修正を目指しているわけではない。本原則は、それ以外の場合において、裁判所が公衆によるアクセスを許しており、なお且つそのアクセスを却下しようとする試みが国家安全保障を根拠にしている場合にのみ、当てはまる。
裁判手続と資料にアクセスする公衆の権利は、以下を促進する上でのアクセスの重要性に由来する。すなわち(i)訴訟手続にお ける実際上及び認識上の平等性と公平性(ii)裁判の当事者による適正且つ一層誠実な行為(iii)パブリック・コメントの精度向上。

 

原則 29:
刑事訴訟の当事者による情報へのアクセス
(a) 裁判所は、被告人が自身の裁判に出廷することを、国家安全保障を理由にして禁止してはならない。
(b) いかなる場合でも、被告人が証拠について精査、反論する機会を持たないまま、有罪判決を下したり、自由を剥奪したりするべきではない。
(c) 法的公正さの点から、公的機関は被告人と被告人の弁護人に対し、その個人が問われている容疑と、公正な裁判を確実に行うために必要なその他の情報を、たとえ機密扱いの情報であっても、原則3~6、10、27、28に従い、公共の利益を考慮した上で、開示するべきである。
(d) 公正な裁判を保証するために必要な情報の開示を公的機関が拒んだ場合、裁判所は審理を停止、若しくは起訴を棄却すべきである。
注記:公権力は、情報を秘匿することで起こる不利益を自ら被ると決断してもよいが、情報の秘匿を求める際にその情報を公権力の都合のために援用するべきではない。
注記:原則29と30が、公衆による情報へのアクセスに関する本原則の中に含まれているのは、司法による精査と、それと関連 して起こる司法の監視を背景とした情報開示とが、情報公開のための重要な手段であることが多いためである。

 

原則 30:
民事訴訟の当事者による情報へのアクセス
(a) 民事訴訟における、公権力におる情報非開示の要請は全て、原則3~6、10、27、28に従い、公共の利益を考慮した上で、精査されるべきである。
(b) 人権侵害の被害者は、被った侵害についての情報公開を含む、実効的な救済及び補償を受ける権利を有する。公権力は、こ の権利に矛盾するような方法で、被害者の主張のために不可欠な情報を秘匿してはならない。
(c) また公衆は、重大な人権侵害や、国際人道法の重大な違反に関する情報への権利も有する。

 
 

目次
 
, 前文, 語句の定義,
第1章, 第2章, 第3章 A, 第3章 B, 第4章, 第5章, 第6章, 第7章, 第8章,
付録 A