五日市憲法草案

第二篇 公 法

第一章 国民の権利

第42条
  1. 左(下)に掲ぐる者を、日本国民とす。
    1 凡そ日本国内に生るる者
    2 日本国外に生るるも、日本国人を父母とする子女。
    3 帰化の許状を得たる外国人。
  2. 但し、帰化の外国人が享有すべき其権利は、法律別に之を定む。
第43条
  1. 左(下)に掲ぐる者は、政権の受用を停閣す。
    1 外形の無能(廃疾の類)、心性の無能(狂癲白痴の類)。
    2 禁獄、若くは配流の審判。
  2. 但し、期満れば政権剥奪の禁を解く。
第44条
 左(下)に掲ぐる者は、日本国民の権利を失う。

  1. 外国に帰化し、外国の籍に入る者。
  2. 日本帝国の允許を経ずして、外国政府より官職爵位称号、若くは恩賞禁を受かる者。
第45条
 日本国民は、各自の権利、自由を達す可し。他より妨害す可らず。且つ、国法之を保障し可し
第46条
 日本国民は、国憲許す所の財産、知識ある者は、国事政務に参与し、之を可否の発言をなし、之を議するの権を有す。
第47条
 凡そ日本国民は、族籍位階の別を問わず、法律上の前に対しては平等の権利たる可し
第48条
 凡そ日本国民は、日本全国に於て同一の法典を準用し、同一の保護を受く可し。地方及門閥、若くは一人一族に与うるの時権あることなし。
第49条
 凡そ日本国に在住する人民は、内外国人を論せず、其身体、生命、財産、名誉を保固す
第50条
 法律の条規は、其効を既往に及ぼすことある可らず。
第51条
  1. 凡そ日本国民は、法律を遵守するに於ては、万事に就き予め検閲を受くることなく、自由に其思想、意見、論説、図絵を著述し、之を出版、頒行し、或は公衆に対し講談、討論、演説し以て、之を公にすることを得べし
  2. 但し、其弊害を抑制するに須要なる処分を定めたるの法律に対しては、其責罰を受任す可し。
第52条
 凡そ思想、自由の権を受用するに因り、犯す所の罪あるときは、法律に定めたる時機并に程式に循拠して、其責を受く可し。著刻犯の軽重を定むるは、法律に定めたる特例を除くの外は、陪審官之を行う
第53条
 凡そ日本国民は、法律に拠るの外に、或は彊て之を為さしめられ、或は彊て之を止めしめらるる等のこと、ある可らず。
第54条
  1. 凡そ日本国民は、集会の性質、或は数人連署、或は一個人の資格を以てするも、法律に定めたる程式に循拠し、皇帝国会及何れの衙門に向ても、直接に奏呈請願、又上書建白するを得るの権を有す
  2. 但し、該件に因て牢獄に囚附せられ、或は刑罰に処せらるること、ある可らず。若し政府の処置に関し、又国民相互の事に関し、其他何にても自己の意に無理と思考するとあれば、皇帝国会何れの衙門に向ても、上書建白請願することを得可し。
第55条
 凡そ日本国民は、華士族平民を論ぜず、其才徳器能に応じ、国家の文武官僚に拝就する同等の権利を有す
第56条
  1. 凡そ日本国民は、何宗教たるを論ぜず、之を信仰するは確認の自由に任ず。然れども政府は、何時にても国安を保し、及各宗派の間に平和を保存するに応当なる処分を為すことを得。
  2. 但し、国家の法律中に、宗旨の性質を負わしむるものは、国憲にあらざるものとす。
第57条
 凡そ何れの労作、工業、農耕と雖ども、行儀風俗に戻り、国民の安寧、若くは健康を傷害するに非れば、之を禁制することなし。
第58条
  1. 凡そ日本国民は、結社集会の目的、若くは其社会の使用する方法に於て、国禁を犯し、若くは国難を醸すべきの状なく、又戎器を携うるに非ずして、平穏に結社集会するの権を有す
  2. 但し、法律は、結社集会の弊害を抑制するに須要なる処分を定む。
第59条
 凡そ日本国民の、信書の秘密を侵すことを得ず。其信書を勾収するは、現在の法律に依り、法に適したる拿捕、又は探索の場合を除くの外、戦時、若くは法衙の断案に拠(る)に非れば、之を行うことを得ず。
第60条
 凡そ日本国民は、法律に定めたる時機に際し、法律に定示せる規程に循拠するに非ざれば、之を拘引、召喚、囚捕、禁獄、或は強いて其屋戸鎖を打開することを得ず
第61条
 凡そ日本国民各自の住居は、全国中何(如)にても其人の自由なる可し。而して他より之を侵す可らず。若し家主の承允なく、或は家内より招き呼ぶことなく、又火災、水災等を防御する為に非ずして、夜間人の家に侵し入ることを得ず。
第62条
 凡そ日本国民は、財産所有の権を保固にす。如何なる場合と雖ども、財産を没収せらるることなし。公規に依り其公益たるを証するも仍お、時に応ずる至当なる前価の賠償を得るの後に非れば、之れら財産を買上らるることなかる可し。
第63条
 凡そ日本国民は、国会に於て決定し、国帝の許可あるに非れば、決して租税を賦せらるることなかる可し。
第64条
 凡そ日本国民は、当該の裁判官、若くは裁判所に非れば、縦令既定の刑法に依り、又其法律に依り定むる所の規程に循うも、之を糺治、裁審することを得ず。
第65条
 法律の正条に明示せる所に非れば、甲乙の別を論せず拘引、逮捕、糺弾、処刑を被ることなし。且つ、一端処断を得たる事件に付、再次の糺弾を受く可らず
第66条
 凡そ日本国民は、法律に掲ぐる場合を除くの外、之を拿捕することを得ず。又拿捕する場合に於ては、裁判官自ら署名したる文書を以て、其理由と劾告者と承認の名を被告者に告知す可し。
第67条
  1. 総て拿捕したる者は、二十四時間内に裁判官の前に出すことを要す。拿捕したる者を直に放免すること能はざるときに於ては、裁判官より其理由を明記した(る)宣告状を以て、該犯を禁錮す可し。右(先)の宣告は、力(つと)めて可能的迅速を要し、遅くも三日間内に之を行う可し。
  2. 但し、裁判官の居住と相鄰接する府邑村落の地に於て拿捕するときは、其時より二十四時間内に之を告知す可し。若し裁判官の居住より遠隔する地に於て拿捕するときは、其距離遠近に準じ、法律に定めたる当応の期限内に之を告知す可し。
第68条
 右(先)宣告状を受けたる者の求に因り、裁判官の宣言したる事件を遅滞なく控訴し、又上告することを得べし。
第69条
 一般犯罪の場合に於て、法律に定むる所の保釈を受くる権を有す
第70条
 何人も、正当の裁判官より阻隔せらるることなし。是故に、臨時裁判所を設立することを得可らず
第71条
 国事犯の為に死刑を宣告さるること、なかる可し
第72条
 凡そ法に違うて命令し、又放免を怠りたる拿捕は、政府より其損害を被りたる者に償金を払う可し。
第73条
 凡そ日本国民は、何人に論なく、法式の徴募に膺り、兵器を擁して海陸の軍伍に入り、日本国の為に防護す可し
第74条
 又其所有財産に此率して、国家の負任(公費租税)を助くるの責を免る可らず。皇族と雖ども、税を除免せらるることを得可らず
第75条
 国債公債は、一般の国民たる者、其負担の責を免る可らず。
第76条
 子弟の教育に於て、其学科及教授は自由なるものとす。然れども子弟小学の教育は、父兄たる者の免る可らざる責任とす。
第77条
 府県令は、特別の国法を以て其綱領を制定せらる可し。府県の自治は、各地の風俗、習例に因るものなるが故に、必らず之に干渉妨害す可らず。其権域は、国会と雖ども之を侵す可らざるものとす。

 

目 次