元国税の警告する仮想通貨リスク

 
元国税の警告する仮想通貨リスク
まぐまぐニュース 大村大次郎

2018年1月は、のちに「激動の年」と言われるほど、投資や金融の世界で大きな出来事がありました。それが、ビットコインをはじめとする仮想通貨の急騰とその直後の大暴落、そしてあのコインチェク社「NEM流出事件」です。元国税調査官の大村大次郎さんは自身のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』で、仮想通貨が一番急騰し盛り上がっていた1月1日発行の号で「仮想通貨は必ず衰退する」と指摘。そして今回、仮想通貨のリスクについて、元国税調査官ならではの視点で詳しく解説しています。

(中略)
 
 
■ 元国税局職員が指摘していた「仮想通貨のリスク」

一時期、仮想通貨は飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長していましたが、今年に入って例のNEM流出事件により、急速にブームが冷え込んできましたね。

ちょっと自慢をさせてもらえば、筆者は、今年の1月1日に発行したこのメルマガで「仮想通貨はいずれ衰退する」という下記の記事を書かせてもらいました。
 
● ビットコインは脱税し放題か?元国税職員が明かす仮想通貨の実態
 
今年の正月というと、年末にビットコインが最高値をつけるなど、仮想通貨が一番、勢いがあった時期でした。猫も杓子も「ビットコイン」「仮想通貨」とわめいていたときです。

そういう時期に、「仮想通貨はいずれ衰退する」と書いたのですから、反発もけっこうありました。SNSなどでも「大村は間違っている」「大村は仮想通貨で儲けられなかったから妬んでいる」などとも言われておりました。

が、そのメルマガを発行して1か月も経たないうちに、仮想通貨の大半が大暴落したわけです。

どこぞかのビジネス書作家であれば、「俺の予言が当たった」と大々的に喧伝するところですが、私はそこまで図々しくないので、ほんのちょっと自慢させていただきますね。自慢するだけで、もうすでに十分、図々しい?

で、前回は、仮想通貨のリスクについて十分にお話していなかったので、あらためて今回お話したいと思います。

前回、私は

仮想通貨というのは、幻想通貨といえるもので、その通貨の価値には、実体の裏付けがありません

と述べました。

すると、それに対してSNSで「今の通貨は金と交換しないのだから、すべて幻想通貨じゃないか」と反論している方がおられました。

確かに、今の世界中の通貨のほとんどは、金などとの交換の義務はありません。だから、確かに世界中のほとんどの通貨は「有価証書」ではなく、単なる紙切れなのです。今は信用があるから流通していますが、社会から信用を失って通貨の使用ができなくなれば、本当にただの紙切れになってしまうのです。

その点においては、確かに仮想通貨も現実の通貨も同様と言えます。

しかし、現実の通貨は、国家による後ろ盾があります。国は税収という巨額の収入がありますし、国有財産という莫大な資産を持っています。その大きな資産が、その国の通貨の信用を裏付けているのです。

その点、仮想通貨にはそういう後ろ盾がまったくありません。発行元は、なにかしらの資産を背景にして、仮想通貨を発行したわけではありません。つまり、担保をまったく持っておらずに、証券を発行したようなものなのです。

また普通の通貨は、発行する国家が威信をかけて社会の信用を失わないような努力をしています。

各国の中央銀行は、相当の貴金属や金目の物を保有しています。そして、もし通貨の信用がなくなりそうになれば、国家は国の資産を使うなど最大限の努力をして、信用維持に務めます。

その点が、仮想通貨とまったく違うところです。

仮想通貨は、中央組織が大量の貴金属を保有しているようなこともなければ、信用が傾いた時に、誰かが資産を投げ出して信用を維持の努力をするようなこともありません。

つまり、仮想通貨の信用というのは「人が信用するかどうか」だけなのです。人が信用しなくなれば、価値はまったくなくなり、それで一巻の終わりなのです。

これほど根幹に不安を抱えている通貨は他に例がありません。

私が「仮想通貨は衰退する」と判断した最大の根拠はここにあるのです。
 
 
■ なぜ仮想通貨の値はゼロになっていないのか?

ここまで読んで来られた方の中には、

「それでもまだ仮想通貨はゼロになったわけではない」
「一番いい時に比べれば半分以下になったが、まだ上がることもあり、下がりっぱなしではない」

と反論する方もおられるでしょう。

なぜ、仮想通貨の価値がゼロになっていないのかというと、仮想通貨のことを「まだ信じている人がいる」というだけのことです。

信じている人がいる限りは、価値はゼロにはなりません

また、もしかしたら、仮想通貨を信じ続ける人は消えず、永遠に仮想通貨の価値はゼロにはならないかもしれません。

しかし、状況的に見て、仮想通貨は収束に向かう可能性が高いということは言えます。

今、仮想通貨を持っている人のほとんどは、仮想通貨を「通貨として使いやすい」から持っているのではなく、「値が上がりそう」「儲かりそう」と思って、保有したものと思われます。通貨としては、こんなに価値が乱高下するようでは、非常に使いづらいはずです。

そして、通貨として広く使用される可能性がなくなれば、「儲けのための金融商品」としての価値しかなくなるわけです。 

しかし通貨として普及されないとなると、「金融商品」としての価値もやがて下がっていくと思われます。

先ほど述べましたように、仮想通貨には「最終的に価値を保証する担保物」がまったくないわけです。

普通の通貨であれば、発行国の資産が担保物になります。しかし、仮想通貨は、一旦下がり始めれば、いつでもゼロになる可能性があるのです。

つまり、仮想通貨は、 

「通貨としては現実的に使いづらい」
「金融商品としては価値がまったく保証されていない」

という二つの大きなリスクを持っているのです。

この二つのリスクに誰もが気づくようになれば、おのずと仮想通貨から離れていくものと思われます。
 
 

プロフィール:大村大次郎(おおむら・おおじろう)
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。

 
 

広告