日本共産党綱領

日本共産党綱領
2004年1月17日 第23回党大会で改定

 
一、戦前の日本社会と日本共産党
 

1.

 日本共産党は、わが国の進歩と変革の伝統を受け継ぎ、日本と世界の人民の解放闘争の高まりのなかで、1922年7月15日、「科学的社会主義」を理論的な基礎とする政党として、創立された。

 当時の日本は、世界の主要な独占資本主義国の一つになってはいたが、国を統治する全権限を天皇が握る専制政治(絶対主義的天皇制)がしかれ、国民から権利と自由を奪うと伴に、農村では重い小作料で耕作農民を締めつける半封建的な地主制度が支配し、独占資本主義も労働者の無権利と過酷な搾取を特徴としていた。

 この体制の下、日本は、アジアで唯一の帝国主義国として、アジア諸国に対する侵略と戦争の道を進んでいた。

 党は、この状況を打破して、まず平和で民主的な日本を創りあげる民主主義革命を実現することを当面の任務とし、次いで社会主義革命に進むという方針の下に活動した。
 

2.

 党は、日本国民を無権利状態に置いてきた天皇制の専制支配を倒し、主権在民、国民の自由と人権を勝ち取るために闘った。

 党は、半封建的な地主制度をなくし、土地を農民に解放するために闘った。

 党は、とりわけ過酷な搾取によって苦しめられていた労働者階級の生活の根本的な改善、すべての勤労者、知識人、女性、青年の権利と生活の向上のために闘った。

 党は、進歩的、民主的、革命的な文化の創造と普及のために闘った。

 党は、ロシア革命と中国革命に対する日本帝国主義の干渉戦争、中国に対する侵略戦争に反対し、世界とアジアの平和のために闘った。

 党は、日本帝国主義の植民地であった朝鮮、台湾の解放と、アジアの植民地・半植民地諸民族の完全独立を支持して闘った。
 

3.

 日本帝国主義は、1931年、中国の東北部への侵略戦争を、1937年には中国への全面侵略戦争を開始して、第二次世界大戦に道を開く最初の侵略国家となった。1940年、ヨーロッパにおけるドイツ、イタリアのファシズム国家と軍事同盟を結成し、1941年には、中国侵略の戦争をアジア・太平洋全域に拡大して、第二次世界大戦の推進者となった。

 帝国主義戦争と天皇制権力の暴圧によって、国民は苦難を強いられた。党の活動には重大な困難があり、躓きも起こったが、多くの日本共産党員は、迫害や投獄に屈することなく、様々な裏切りとも闘い、党の旗を守って活動した。この闘いで少なからぬ党員が弾圧のため生命を奪われた

 他のすべての政党が侵略と戦争、反動の流れに合流するなかで、日本共産党が平和と民主主義の旗を掲げて不屈に闘い続けたことは、日本の平和と民主主義の事業にとって不滅の意義を持った。

 侵略戦争は、二千万人をこえるアジア諸国民と三百万人をこえる日本国民の生命を奪った。この戦争のなかで、沖縄は地上戦の戦場となり、日本本土も全土にわたる空襲で多くの地方が焦土となった。1945年8月には、アメリカ軍によって広島、長崎に世界最初の原爆が投下され、その犠牲者は二十数万人にのぼり(同年末までの人数)、日本国民は、核兵器の惨害をその歴史に刻み込んだ被爆国民となった。

 ファシズムと軍国主義の日独伊三国同盟が世界的に敗退するなかで、1945年8月、日本帝国主義は敗北し、日本政府はポツダム宣言を受諾した。反ファッショ連合国によるこの宣言は、軍国主義の除去と民主主義の確立を基本的な内容としたもので、日本の国民が進むべき道は、平和で民主的な日本の実現にこそあることを示した。これは、党が不屈に掲げてきた方針が基本的に正しかったことを、証明したものであった。
 
 
 
二、現在の日本社会の特質
 

4.

 第二次世界大戦後の日本では、いくつかの大きな変化が起こった。

 第一は、日本が、独立国としての地位を失い、アメリカへの事実上の従属国の立場になったことである。

 敗戦後の日本は、反ファッショ連合国を代表するという名目で、アメリカ軍の占領下に置かれた。アメリカは、その占領支配をやがて自分の単独支配に変え、さらに1951年に締結されたサンフランシスコ平和条約と日米安保条約では、沖縄の占領支配を継続するとともに、日本本土においても、占領下に各地につくった米軍基地の主要部分を存続させ、アメリカの世界戦略の半永久的な前線基地という役割を日本に押しつけた。日米安保条約は、1960年に改定されたが、それは、日本の従属的な地位を改善するどころか、基地貸与条約という性格に加え、有事の際に米軍と共同して戦う日米共同作戦条項や日米経済協力の条項などを新しい柱として盛り込み、日本をアメリカの戦争に巻き込む対米従属的な軍事同盟条約に改悪・強化したものであった。

 第二は、日本の政治制度における、天皇絶対の専制政治から、主権在民を原則とする民主政治への変化である。この変化を代表したのは、1947年に施行された日本国憲法である。この憲法は、主権在民、戦争の放棄、国民の基本的人権、国権の最高機関としての国会の地位、地方自治など、民主政治の柱となる一連の民主的平和的な条項を定めた。形を変えて天皇制の存続を認めた天皇条項は、民主主義の徹底に逆行する弱点を残したものだったが、そこでも、天皇は「国政に関する権能を有しない」ことなどの制限条項が明記された。

 この変化によって、日本の政治史上はじめて、国民の多数の意思にもとづき、国会を通じて、社会の進歩と変革を進めるという道筋が、制度面で準備されることになった。

 第三は、戦前、天皇制の専制政治とともに、日本社会の半封建的な性格の根深い根源となっていた半封建的な地主制度が、農地改革によって、基本的に解体されたことである。このことは、日本独占資本主義に、その発展のより近代的な条件を与え、戦後の急成長を促進する要因の一つとなった。

 日本は、これらの条件の下で、世界の独占資本主義国の一つとして、大きな経済的発展を遂げた。しかし、経済的な高成長にも関わらず、アメリカに対する従属的な同盟という対米関係の基本は変わらなかった。
 

5.

 わが国は、高度に発達した資本主義国でありながら、国土や軍事などの重要な部分をアメリカに握られた事実上の従属国となっている。

 わが国には、戦争直後の全面占領の時期に作られたアメリカ軍事基地の大きな部分が、半世紀を経て未だに全国に配備され続けている。なかでも、敗戦直後に日本本土から切り離されて米軍の占領下に置かれ、サンフランシスコ平和条約でも占領支配の継続が規定された沖縄は、アジア最大の軍事基地とされている。沖縄県民を先頭にした国民的な闘いのなかで、1972年、施政権返還が勝ち取られたが、米軍基地の実態は基本的に変わらず、沖縄県民は、米軍基地のただ中での生活を余儀なくされている。アメリカ軍は、わが国の領空、領海を欲しいままに踏みにじっており、広島、長崎、ビキニと、国民が三度核兵器の犠牲とされた日本に、国民に隠して核兵器持ち込みの「核密約」さえ押しつけている。

 日本の自衛隊は、事実上アメリカ軍の掌握と指揮の下に置かれており、アメリカの世界戦略の一翼を担わされている。

 アメリカは、日本の軍事や外交に、依然として重要な支配力を持ち、経済面でも常に大きな発言権を行使している。日本の政府代表は、国連その他国際政治の舞台で、しばしばアメリカ政府の代弁者の役割を果たしている。

 日本とアメリカとの関係は、対等・平等の同盟関係では決してない。日本の現状は、発達した資本主義諸国の間ではもちろん、植民地支配が過去のものとなった今日の世界の国際関係のなかで、極めて異常な国家的な対米従属の状態にある。アメリカの対日支配は、明らかに、アメリカの世界戦略とアメリカ独占資本主義の利益のために、日本の主権と独立を踏みにじる帝国主義的な性格のものである
 

6.

 日本独占資本主義は、戦後の情勢の下で、対米従属的な国家独占資本主義として発展し、国民総生産では、早い時期にすべてのヨーロッパ諸国を抜き、アメリカに次ぐ地位に到達するまでになった。その中心を成す少数の大企業は、大きな富をその手に集中して、巨大化と多国籍企業化の道を進むとともに、日本政府をその強い影響の下に置き、国家機構の全体を自分たちの階級的利益の実現のために最大限に活用してきた。国内的には、大企業・財界が、アメリカの対日支配と結びついて、日本と国民を支配する中心勢力の地位を占めている

 大企業・財界の横暴な支配の下、国民の生活と権利に関わる多くの分野で、ヨーロッパなどで常識となっているルールが未だに確立していないことは、日本社会の重大な弱点となっている。労働者は、過労死さえもたらす長時間・過密労働や著しく差別的な不安定雇用に苦しみ、多くの企業で「サービス残業」という違法の搾取方式までが常態化している。雇用保障でも、ヨーロッパのような解雇規制の立法も存在しない。

 女性差別の面でも、国際条約に反する遅れた実態が、社会生活の各分野に残って、国際的な批判を受けている。公権力による人権の侵害をはじめ、さまざまな分野での国民の基本的人権の抑圧も、重大な状態を残している。

 日本の工業や商業に大きな比重を占め、日本経済に不可欠の役割を担う中小企業は、大企業との取り引き関係でも、金融面、税制面、行政面でも、不公正な差別と抑圧を押しつけられ、不断の経営悪化に苦しんでいる。農業は、自立的な発展に必要な保障を与えられないまま、「貿易自由化」の嵐に晒され、食料自給率が発達した資本主義国で最低の水準に落ち込み、農業復興の前途を見い出し得ない状況が続いている。

 国民全体の生命と健康に関わる環境問題でも、大企業を中心とする利潤第一の生産と開発の政策は、自然と生活環境の破壊を全国的な規模で引き起こしている。

 日本政府は、大企業・財界を代弁して、大企業の利益優先の経済・財政政策を続けてきた。日本の財政支出の大きな部分が大型公共事業など大企業中心の支出と軍事費とに向けられ、社会保障への公的支出が発達した資本主義国のなかで最低水準に止まるという「逆立ち」財政は、その典型的な現われである。

 その根底には、反動政治家や特権官僚と一部大企業との腐敗した癒着・結合がある。絶えることのない汚職・買収・腐敗の連鎖は、日本独占資本主義と反動政治の腐朽の底深さを表わしている。

 日本経済に対するアメリカの介入は、これまでもしばしば日本政府の経済政策に誤った方向づけを与え、日本経済の危機と矛盾の大きな要因となってきた。「グローバル化(地球規模化)」の名の下に、アメリカ式の経営モデルや経済モデルを外から強引に持ち込もうとする企ては、日本経済の前途にとって、一段と有害で危険なものとなっている。

 これらすべてによって、日本経済は特に基盤の弱いものとなっており、21世紀の世界資本主義の激動する情勢の下で、日本独占資本主義の前途には、とりわけ激しい矛盾と危機が予想される。

 日本独占資本主義と日本政府は、アメリカの目下の同盟者としての役割を、軍事、外交、経済のあらゆる面で積極的、能動的に果たしつつ、アメリカの世界戦略に日本をより深く結びつける形で、自分自身の海外での活動を拡大しようとしている。

 軍事面でも、日本政府は、アメリカの戦争計画の一翼を担いながら、自衛隊の海外派兵の範囲と水準を一歩一歩拡大し、海外派兵を既成事実化すると伴に、それをテコに有事立法や集団的自衛権行使への踏み込み、憲法改悪など、軍国主義復活の動きを推進する方向に立っている。軍国主義復活をめざす政策と行動は、アメリカの先制攻撃戦略と結びついて展開され、アジア諸国民との対立を引き起こしており、アメリカの前線基地の役割と併せて、日本を、アジアにおける軍事的緊張の危険な震源地の一つとしている。

 対米従属と大企業・財界の横暴な支配を最大の特質とするこの体制は、日本国民の根本的な利益との間に解決できない多くの矛盾を持っている。その矛盾は、21世紀を迎えて、ますます重大で深刻なものとなりつつある。
 
 
 
三、世界情勢 - 20世紀から21世紀へ
 

7.

 20世紀は、独占資本主義、帝国主義の世界支配を以って始まった。この世紀の間に、人類社会は、二回の世界大戦、ファシズムと軍国主義、一連の侵略戦争など、世界的な惨禍を経験したが、諸国民の努力と苦闘を通じて、それらを乗り越え、人類史の上でも画期を成す巨大な変化が進行した。

 多くの民族を抑圧の鎖の下に置いた植民地体制は完全に崩壊し、民族の自決権は公認の世界的な原理という地位を獲得し、百を超える国々が新たに政治的独立を勝ち取って主権国家となった。これらの国々を主要な構成国とする非同盟諸国会議は、国際政治の舞台で、平和と民族自決の世界を目指す重要な力となっている。

 国民主権の民主主義の流れは、世界の大多数の国々で政治の原則となり、世界政治の主流となりつつある。

 国際連合の設立とともに、戦争の違法化が世界史の発展方向として明確にされ、戦争を未然に防止する平和の国際秩序の建設が世界的な目標として提起された。20世紀の諸経験、なかでも侵略戦争やその企てとの闘いを通じて、平和の国際秩序を現実に確立することが、世界諸国民のいよいよ緊急切実な課題となりつつある。
 

8.

 資本主義が世界を支配する唯一の体制とされた時代は、1917年にロシアで起こった十月社会主義革命を画期として、過去のものとなった。第二次世界大戦後には、アジア、東ヨーロッパ、ラテンアメリカの一連の国々が、資本主義からの離脱の道に踏み出した。

 最初に社会主義への道に踏み出したソ連では、レーニンが指導した最初の段階においては、遅れた社会経済状態からの出発という制約にも関わらず、また、少なくない試行錯誤を伴いながら、真剣に社会主義を目指す一連の積極的努力が記録された。しかし、レーニン死後、スターリンをはじめとする歴代指導部は、社会主義の原則を投げ捨てて、対外的には、他民族への侵略と抑圧という覇権主義の道、国内的には、国民から自由と民主主義を奪い、勤労人民を抑圧する官僚主義・専制主義の道を進んだ。「社会主義」の看板を掲げて行われただけに、これらの誤りが世界の平和と社会進歩の運動に与えた否定的影響は、とりわけ重大であった。

 日本共産党は、「科学的社会主義」を擁護する自主独立の党として、日本の平和と社会進歩の運動に対するソ連覇権主義の干渉に対しても、チェコスロバキアやアフガニスタンに対するソ連の武力侵略に対しても、断固として闘い抜いた。

 ソ連とそれに従属してきた東ヨーロッパ諸国で1989~91年に起こった支配体制の崩壊は、社会主義の失敗ではなく、社会主義の道から離れ去った覇権主義と官僚主義・専制主義の破産であった。これらの国々では、革命の出発点においては、社会主義を目指すという目標が掲げられたが、指導部が誤った道を進んだ結果、社会の実態としては、社会主義とは無縁な人間抑圧型の社会として、その解体を迎えた。

 ソ連覇権主義という歴史的な巨悪の崩壊は、大局的な視野で見れば、世界の革命運動の健全な発展への新しい可能性を開く意義をもった。

 今日、重要なことは、資本主義から離脱したいくつかの国々で、政治上・経済上の未解決の問題を残しながらも、「市場経済を通じて社会主義へ」という取り組みなど、社会主義を目指す新しい探究が開始され、人口が13億を超える大きな地域での発展として、21世紀の世界史の重要な流れの一つとなろうとしていることである。
 

9.

 ソ連などの解体は、資本主義の優位性を示すものとはならなかった。巨大に発達した生産力を制御できないという資本主義の矛盾は、現在、広範な人民諸階層の状態の悪化、貧富の格差の拡大、繰り返す不況と大量失業、国境を越えた金融投機の横行、環境条件の地球的規模での破壊、植民地支配の負の遺産の重大さ、アジア・中東・アフリカ・ラテンアメリカの多くの国々での貧困の増大(南北問題)など、嘗てない大きな規模と鋭さを以って現われている。

 核戦争の危険も引き続き地球と人類を脅かしている。米ソの軍拡競争のなかで蓄積された膨大な量の核兵器は、今なお人類の存続にとっての重大な脅威である。核戦争の脅威を根絶する為には、核兵器の廃絶に代わる解決策は無い。「ノー・モア・ヒロシマ、ナガサキ(広島・長崎をくりかえすな)」という原水爆禁止世界大会の声は、世界の各地に広がり、国際政治の上でも、核兵器廃絶の声は益々大きくなっているが、核兵器を世界戦略の武器としてその独占体制を強化し続ける核兵器固執勢力の企みは根強い。

 世界の様々な地域での軍事ブロック体制の強化や、各種の紛争で武力解決を優先させようとする企ては、緊張を激化させ、平和を脅かす要因となっている。

 なかでも、アメリカが、アメリカ一国の利益を世界平和の利益と国際秩序の上に置き、国連をも無視して他国に対する先制攻撃戦争を実行し、新しい植民地主義を持ち込もうとしていることは、重大である。アメリカは、「世界の警察官」と自認することによって、アメリカ中心の国際秩序と世界支配を目指すその野望を正当化しようとしているが、それは、独占資本主義に特有の帝国主義的侵略性を、ソ連の解体によってアメリカが世界の唯一の超大国となった状況の下で、剥き出しに現わしたものに他ならない。これらの政策と行動は、諸国民の独立と自由の原則とも、国連憲章の諸原則とも両立できない、あからさまな覇権主義、帝国主義の政策と行動である。

 いま、アメリカ帝国主義は、世界の平和と安全、諸国民の主権と独立にとって最大の脅威となっている。

 その覇権主義、帝国主義の政策と行動は、アメリカと他の独占資本主義諸国との間にも矛盾や対立を引き起こしている。また、経済の「グローバル化」を名目に世界の各国をアメリカ中心の経済秩序に組み込もうとする経済的覇権主義も、世界の経済に重大な混乱をもたらしている。
 

10.

 この情勢のなかで、いかなる覇権主義にも反対し、平和の国際秩序を守る闘争、核兵器の廃絶をめざす闘争、軍事ブロックに反対する闘争、諸民族の自決権を徹底して尊重しその侵害を許さない闘争、各国の経済主権の尊重の上に立った民主的な国際経済秩序を確立する為の闘争が、いよいよ重大な意義を持ってきている。

 平和と進歩を目指す勢力が、それぞれの国でも、また国際的にも、正しい前進と連帯を図ることが重要である。

 日本共産党は、労働者階級をはじめ、独立、平和、民主主義、社会進歩の為に闘う世界のすべての人民と連帯し、人類の進歩のための闘争を支持する。

 なかでも、国連憲章に基づく平和の国際秩序か、アメリカが横暴を欲しいままにする干渉と侵略、戦争と抑圧の国際秩序かの選択が、いま問われていることは、重大である。日本共産党は、アメリカの覇権主義的な世界支配を許さず、平和の国際秩序を築き、核兵器も軍事同盟も無い世界を実現する為の国際的連帯を、世界に広げるために力を尽くす。

 世界は、情勢のこのような発展のなかで、21世紀を迎えた。世界史の進行には、多くの波乱や曲折、時には一時的な、或いはかなり長期に亘る逆行もあるが、帝国主義・資本主義を乗り越え、社会主義に前進することは、大局的には歴史の不可避的な発展方向である。
 
 
 
四、民主主義革命と民主連合政府
 

11.

 現在、日本社会が必要としている変革は、社会主義革命ではなく、異常な対米従属と大企業・財界の横暴な支配の打破-日本の真の独立の確保と政治・経済・社会の民主主義的な改革の実現を内容とする民主主義革命である。それらは、資本主義の枠内で可能な民主的改革であるが、日本の独占資本主義と対米従属の体制を代表する勢力から、日本国民の利益を代表する勢力の手に国の権力を移すことによってこそ、その本格的な実現に進むことができる。この民主的改革を達成することは、当面する国民的な苦難を解決し、国民大多数の根本的な利益に応える独立・民主・平和の日本に道を開くものである。
 

12.

 現在、日本社会が必要とする民主的改革の主要な内容は、次の通りである。

〔国の独立・安全保障・外交の分野で〕
  1.  日米安保条約を、条約第十条の手続きによって廃棄し、アメリカ軍とその軍事基地を撤退させる。対等平等の立場に基づく日米友好条約を結ぶ。  経済面でも、アメリカによる不当な介入を許さず、金融・為替・貿易を含むあらゆる分野で自主性を確立する。
     
  2.  主権回復後の日本は、いかなる軍事同盟にも参加せず、すべての国と友好関係を結ぶ平和・中立・非同盟の道を進み、非同盟諸国会議に参加する。
     
  3.  自衛隊については、海外派兵立法を止め、軍縮の措置を採る。安保条約廃棄後のアジア情勢の新しい展開を踏まえつつ、国民の合意での憲法第九条の完全実施(自衛隊の解消)に向かっての前進を図る。
     
  4.  新しい日本は、次の基本点に立って、平和外交を展開する。
    •  日本が過去に行った侵略戦争と植民地支配の反省を踏まえ、アジア諸国との友好・交流を重視する。
       
    •  国連憲章に規定された平和の国際秩序を擁護し、この秩序を侵犯・破壊する如何なる覇権主義的な企てにも反対する。
       
    •  人類の死活に関わる核戦争の防止と核兵器の廃絶、各国人民の民族自決権の擁護、全般的軍縮とすべての軍事ブロックの解体、外国軍事基地の撤去を目指す。
       
    •  一般市民を犠牲にする無差別テロにも報復戦争にも反対し、テロの根絶の為の国際的な世論と共同行動を発展させる。
       
    •  日本の歴史的領土である千島列島と歯舞諸島・色丹島の返還を目指す。
       
    •  多国籍企業の無責任な活動を規制し、地球環境を保護すると伴に、一部の大国の経済的覇権主義を抑え、すべての国の経済主権の尊重および平等・公平を基礎とする民主的な国際経済秩序の確立を目指す。
       
    •  紛争の平和解決、災害、難民、貧困、飢餓などの人道問題に対して、非軍事的な手段による国際的な支援活動を積極的に行う。
       
    •  社会制度の異なる諸国の平和共存および異なる価値観を持った諸文明間の対話と共存の関係の確立に力を尽くす。
       
〔憲法と民主主義の分野で〕
  1.  現行憲法の前文を含む全条項を守り、特に平和的民主的諸条項の完全実施を目指す。
     
  2.  国会を名実共に最高機関とする議会制民主主義の体制、反対党を含む複数政党制、選挙で多数を得た政党または政党連合が政権を担当する政権交代制は、当然堅持する。
     
  3.  18歳選挙権を実現する。選挙制度、行政機構、司法制度などは、憲法の主権在民と平和の精神に立って、改革を進める。
     
  4.  地方政治では「住民が主人公」を貫き、住民の利益への奉仕を最優先の課題とする地方自治を確立する。
     
  5.  国民の基本的人権を制限・抑圧するあらゆる企てを排除し、社会的経済的諸条件の変化に対応する人権の充実を図る。労働基本権を全面的に擁護する。企業の内部を含め、社会生活の各分野で、思想・信条の違いによる差別を一掃する。
     
  6.  男女の平等、同権をあらゆる分野で擁護し、保障する。女性の独立した人格を尊重し、女性の社会的、法的な地位を高める。女性の社会的進出・貢献を妨げている障害を取り除く。
     
  7.  教育では、憲法の平和と民主主義の理念を生かした教育制度・行政の改革を行い、各段階での教育諸条件の向上と教育内容の充実に努める。
     
  8.  文化各分野の積極的な伝統を受け継ぎ、科学、技術、文化、芸術、スポーツなどの多面的な発展を図る。学問・研究と文化活動の自由を守る。
     
  9.  信教の自由を擁護し、政教分離の原則の徹底を図る。
     
  10.  汚職・腐敗・利権の政治を根絶するために、企業・団体献金を禁止する。
     
  11.  天皇条項については、「国政に関する権能を有しない」などの制限規定の厳格な実施を重視し、天皇の政治利用をはじめ、憲法の条項と精神からの逸脱を是正する。
     
     党は、一人の個人が世襲で「国民統合」の象徴となるという現制度は、民主主義および人間の平等の原則と両立するものではなく、国民主権の原則の首尾一貫した展開の為には、民主共和制の政治体制の実現を図るべきだとの立場に立つ。天皇の制度は憲法上の制度であり、その存廃は、将来、情勢が熟したときに、国民の総意によって解決されるべきものである。
     
〔経済的民主主義の分野で〕
  1.  「ルール無き資本主義」の現状を打破し、労働者の長時間労働や一方的解雇の規制を含め、ヨーロッパの主要資本主義諸国や国際条約などの到達点も踏まえつつ、国民の生活と権利を守る「ルールある経済社会」を創る。
     
  2.  大企業に対する民主的規制を主な手段として、その横暴な経済支配を抑える。民主的規制を通じて、労働者や消費者、中小企業と地域経済、環境に対する社会的責任を大企業に果たさせ、国民の生活と権利を守るルール作りを促進すると伴に、釣り合いのとれた経済の発展を図る。経済活動や軍事基地などによる環境破壊と公害に反対し、自然保護と環境保全の為の規制措置を強化する。
     
  3.  国民生活の安全の確保および国内資源の有効な活用の見地から、食料自給率の向上、安全優先のエネルギー体制と自給率の引き上げを重視し、農林水産政策、エネルギー政策の根本的な転換を図る。国の産業政策のなかで、農業を基幹的な生産部門として位置づける。
     
  4.  国民各層の生活を支える基本的制度として、社会保障制度の総合的な充実と確立を図る。子どもの健康と福祉、子育ての援助の為の社会施設と措置の確立を重視する。日本社会として、少子化傾向の克服に力を注ぐ。
     
  5.  国の予算で、無駄な大型公共事業をはじめ、大企業・大銀行本位の支出や軍事費を優先させている現状を改め、国民の暮らしと社会保障に重点をおいた財政・経済の運営を目指す。大企業・大資産家優遇の税制を改め、負担能力に応じた負担という原則に立った税制と社会保障制度の確立を目指す。
     
  6.  すべての国々との平等・互恵の経済関係を促進し、南北問題や地球環境問題など、世界的規模の問題の解決への積極的な貢献を図る。

 

13.

 民主主義的な変革は、労働者、勤労市民、農漁民、中小企業家、知識人、女性、青年、学生など、独立、民主主義、平和、生活向上を求めるすべての人々を結集した統一戦線によって、実現される。統一戦線は、反動的党派と闘いながら、民主的党派、各分野の諸団体、民主的な人々との共同と団結を固めることに因って作りあげられ、成長・発展する。当面の差し迫った任務に基づく共同と団結は、世界観や歴史観、宗教的信条の違いを超えて、推進されなければならない。

 日本共産党は、国民的な共同と団結を目指すこの運動で、先頭に立って推進する役割を果たさなければならない。日本共産党が、高い政治的、理論的な力量と、労働者をはじめ国民諸階層と広く深く結びついた強大な組織力を以って発展することは、統一戦線の発展の為の決定的な条件となる。

 日本共産党と統一戦線の勢力が、積極的に国会の議席を占め、国会外の運動と結びついて闘うことは、国民の要求の実現にとっても、また変革の事業の前進にとっても、重要である。

 日本共産党と統一戦線の勢力が、国民多数の支持を得て、国会で安定した過半数を占めるならば、統一戦線の政府・民主連合政府を作ることができる。日本共産党は、「国民が主人公」を一貫した信条として活動してきた政党として、国会の多数の支持を得て民主連合政府を作る為に奮闘する。

 統一戦線の発展の過程では、民主的改革の内容の主要点の全てではないが、いくつかの目標では一致し、その一致点に基づく統一戦線の条件が生まれるという場合も起こりうる。党は、その場合でも、その共同が国民の利益に応え、現在の反動支配を打破してゆくのに役立つ限り、差し当たって一致できる目標の範囲で統一戦線を形成し、統一戦線の政府を作る為に力を尽くす。

 また、全国各地で革新・民主の自治体を確立することは、その地方・地域の住民の要求実現の柱となると同時に、国政における民主的革新的な流れを前進させる上でも、重要な力となる。

 民主連合政府の樹立は、国民多数の支持に基づき、独占資本主義と対米従属の体制を代表する支配勢力の妨害や抵抗を打ち破る闘いを通じて達成できる。対日支配の存続に固執するアメリカの支配勢力の妨害の動きも、もちろん、軽視することはできない。

 この闘いは、政府の樹立を以って終わるものではない。引き続く前進のなかで、民主勢力の統一と国民的な闘いを基礎に、統一戦線の政府が国の機構の全体を名実ともに掌握し、行政の諸機構が新しい国民的な諸政策の担い手となることが、重要な意義を持ってくる。

 民主連合政府は、労働者、勤労市民、農漁民、中小企業家、知識人、女性、青年、学生など国民諸階層・諸団体の民主連合に基盤を置き、日本の真の独立の回復と民主主義的変革を実行することによって、日本の新しい進路を開く任務を持った政権である。
 

14.

 民主主義的変革によって独立・民主・平和の日本が実現することは、日本国民の歴史の根本的な転換点となる。日本は、アメリカへの事実上の従属国の地位から抜け出し、日本国民は、真の主権を回復するとともに、国内的にも、はじめて国の主人公となる。民主的な改革によって、日本は、戦争や軍事的緊張の根源であることを止め、アジアと世界の平和の強固な礎の一つに変わり、日本国民の活力を生かした政治的・経済的・文化的な新しい発展の道が開かれる。日本の進路の民主的、平和的な転換は、アジアにおける平和秩序の形成の上でも大きな役割を担い、21世紀におけるアジアと世界の情勢の発展にとって、重大な転換点の一つとなり得るものである。
 
 
 
五、社会主義・共産主義の社会を目指して
 

15.

 日本の社会発展の次の段階では、資本主義を乗り越え、社会主義・共産主義の社会への前進を図る社会主義的変革が、課題となる。これまでの世界では、資本主義時代の高度な経済的・社会的な達成を踏まえて、社会主義的変革に本格的に取り組んだ経験は無かった。発達した資本主義の国での社会主義・共産主義への前進を目指す取り組みは、21世紀の新しい世界史的な課題である。

 社会主義的変革の中心は、主要な生産手段の所有・管理・運営を社会の手に移す生産手段の社会化である。社会化の対象となるのは生産手段だけで、生活手段については、この社会の発展のあらゆる段階を通じて、私有財産が保障される。

 生産手段の社会化は、人間による人間の搾取を廃止し、すべての人間の生活を向上させ、社会から貧困を無くすと伴に、労働時間の抜本的な短縮を可能にし、社会のすべての構成員の人間的発達を保障する土台を創り出す。

 生産手段の社会化は、生産と経済の推進力を資本の利潤追求から社会および社会の構成員の物質的精神的な生活の発展に移し、経済の計画的な運営によって、繰り返しの不況を取り除き、環境破壊や社会的格差の拡大などへの有効な規制を可能にする。

 生産手段の社会化は、経済を利潤第一主義の狭い枠組みから解放することによって、人間社会を支える物質的生産力の新たな飛躍的な発展の条件を創り出す。

 社会主義・共産主義の日本では、民主主義と自由の成果をはじめ、資本主義時代の価値ある成果のすべてが、受け継がれ、一層発展させられる。「搾取の自由」は制限され、改革の前進のなかで廃止を目指す。搾取の廃止によって、人間が、本当の意味で、社会の主人公となる道が開かれ、「国民が主人公」という民主主義の理念は、政治・経済・文化・社会の全体に渡って、社会的な現実となる。

 様々な思想・信条の自由、反対政党を含む政治活動の自由は厳格に保障される。「社会主義」の名の下に、特定の政党に「指導」政党としての特権を与えたり、特定の世界観を「国定の哲学」と意義づけたりすることは、日本における社会主義の道とは無縁であり、厳しく退けられる。

 社会主義・共産主義の社会がさらに高度な発展を遂げ、搾取や抑圧を知らない世代が多数を占めるようになった時、原則として一切の強制の無い、国家権力そのものが不必要になる社会、人間による人間の搾取も無く、抑圧も戦争も無い、真に平等で自由な人間関係から成る共同社会への本格的な展望が開かれる。

 人類は、こうして、本当の意味で人間的な生存と生活の諸条件を勝ち取り、人類史の新しい発展段階に足を踏み出すことになる。
 

16.

 社会主義的変革は、短期間に一挙に行われるものではなく、国民の合意の下、一歩一歩の段階的な前進を必要とする長期の過程である。

 その出発点となるのは、社会主義・共産主義への前進を支持する国民多数の合意の形成であり、国会の安定した過半数を基礎として、社会主義を目指す権力が創られることである。そのすべての段階で、国民の合意が前提となる。

 日本共産党は、社会主義への前進の方向を支持するすべての党派や人々と協力する統一戦線政策を堅持し、勤労市民、農漁民、中小企業家に対しては、その利益を尊重しつつ、社会の多数の人々との納得と支持を基礎に、社会主義的改革の道を進むよう努力する。

 日本における社会主義への道は、多くの新しい諸問題を、日本国民の英知と創意によって解決しながら進む新たな挑戦と開拓の過程となる。日本共産党は、そのなかで、次の諸点に特に注意を向け、その立場を守り抜く。

  1.  生産手段の社会化は、その所有・管理・運営が、情勢と条件に応じて多様な形態を取り得るものであり、日本社会にふさわしい独自の形態の探究が重要であるが、生産者が主役という社会主義の原則を踏み外してはならない。「国有化」や「集団化」の看板で、生産者を抑圧する官僚専制の体制を作り上げた旧ソ連の誤りは、絶対に再現させてはならない。
     
  2.  市場経済を通じて社会主義に進むことは、日本の条件に適った社会主義の法則的な発展方向である。社会主義的改革の推進に当たっては、計画性と市場経済とを結合させた弾力的で効率的な経済運営、農漁業・中小商工業など私的な発意の尊重などの努力と探究が重要である。国民の消費生活を統制したり画一化したりするいわゆる「統制経済」は、社会主義・共産主義の日本の経済生活では全面的に否定される。

 

17.

 社会主義・共産主義への前進の方向を探究することは、日本だけの問題ではない。

 21世紀の世界は、発達した資本主義諸国での経済的・政治的矛盾と人民の運動の中からも、資本主義から離脱した国々での社会主義への独自の道を探究する努力の中からも、政治的独立を勝ち取りながら資本主義の枠内では経済的発展の前途を開き得ないでいるアジア・中東・アフリカ・ラテンアメリカの広範な国々の人民の運動の中からも、資本主義を乗り越えて新しい社会を目指す流れが成長し発展することを、大きな時代的特徴としている。

 日本共産党は、それぞれの段階で日本社会が必要とする変革の諸課題の遂行に努力を注ぎながら、21世紀を、搾取も抑圧も無い共同社会の建設に向かう人類史的な前進の世紀とすることを目指して、力を尽くすものである。