旧皇室典範

詔 書

天佑ヲ享有シタル我カ日本帝國ノ寳祚ハ、萬世一系歴代繼承シ以テ朕カ躬ニ至ル。惟フニ宗肇國ノ初、大憲一タヒ定マリ昭ナルコト日星ノ如シ。今ノ時ニ當リ宜ク遺訓ヲ明徴ニシ、皇家ノ成典ヲ制立シ、以テ丕基ヲ永遠ニ鞏固ニスヘシ。茲ニ樞密顧問ノ諮詢ヲ經、皇室典範ヲ裁定シ、朕カ後嗣及子孫ヲシテ遵守スル所アラシム。
 
 
 
御名御璽
 
明治二十二年二月十一日
 
 
 
皇室典範

第一章 皇位継承

第一条
 大日本国皇位は祖宗の皇統にして男系の男子之を継承す。
第二条
 皇位は皇長子に伝ふ。
第三条
 皇長子在らざるときは皇長孫に伝ふ。皇長子及びその子孫在らざるときは皇次子及びその子孫に伝ふ。以下皆之に例す。
第四条
 皇子孫の皇位を継承するは嫡出を先にす。皇庶子孫の皇位を継承するは皇嫡子孫皆在らざるときに限る。
第五条
 皇子孫皆在らざるときは皇兄弟及び其の子孫に伝ふ。
第六条
 皇兄弟及び其の子孫皆在らざるときは皇伯叔父及び其の子孫に伝ふ。
第七条
 皇伯叔父及び其の子孫皆在らざるときは其の以上に於いて最近親の皇族に伝ふ。
第八条
 皇兄弟以上は同等内において嫡を先にし庶を後にし長を先にし幼を後にする。
第九条
 皇嗣精神若は身体の不治の重患あり又は重大の事故ある時は皇族会議及び枢密顧問に諮問し前数条により継承の順序を換ふることを得。

 
第二章 践祚即位

第十条
 天皇崩ずるときは皇嗣即ち践祚し祖宗の神器を承く。
第十一条
 即位の礼及び大嘗祭は京都に於いて之を行う
第十二条
 践祚の後元号を建て一世の間に再び改めざること明治元年の定制に従ふ。

 
第三章 成年立后立太子

第十三条
 天皇及び皇太子皇太孫は満十八年を以て成年とす
第十四条
 前条の外の皇族は満二十年を以て成年とす
第十五条
 儲嗣たる皇子を皇太子とす皇太子在らざるときは儲嗣たる皇孫を皇太孫とす。
第十六条
 皇后皇太子皇太孫を立つるときは詔書を以て之を公布す。

 
第四章 敬 称

第十七条
 天皇太皇太后皇太后皇后の敬称は陛下とす。
第十八条
 皇太子皇太子妃皇太孫皇太孫妃親王親王妃内親王王王妃女王の敬称は殿下とす。

 
第五章 摂 政

第十九条
 天皇未だ成年に達せざるときは摂政を置く。
第二十条
 摂政は成年に達したる皇太子又は皇太孫之に任ず。
第二十一条
 皇太子皇太孫在らざるか又は未だ成年に達せざるときは左の順序により摂政に任ず。

親王及び王
皇 后
皇太后
太皇太后
内親王及び女王
第二十二条
 皇族男子の摂政に任ずるは皇位継承の順序に従う其の女子に於けるも亦之に準ず。
第二十三条
 皇族女子の摂政に任ずるは其の配偶あらざる者に限る。
第二十四条
 最近親の皇族未だ成年に達せざるか又は其の他の事故に由り他の皇族摂政に任じたるときは後来最近親の皇族成年に達し又はその事故既に除くと雖皇太子及び皇太孫に対する外其の任を譲ることなし。
第二十五条
 摂政又は摂政たるべき者精神若しくは身体の重患あり又は重大の事故あるときは皇族会議及び枢密顧問の議を経て其の順序を換ふることを得。

 
第六章 太 傅

第二十六条
 天皇未だ成年に達せざるときは太傅を置き保育を掌らしむ。
第二十七条
 先帝遺命を以って太傅を任ぜざりしときは摂政より皇族会議及び枢密顧問に諮詢し之を選任す。
第二十八条
 太傅は摂政及びその子孫之に任ずることを得ず。
第二十九条
 摂政は皇族会議及び枢密顧問に諮詢したる後に非ざれば太傅を退職せしむることを得ず。

 
第七章 皇 族

第三十条
 皇族と称ふるは太皇太后皇太后皇后皇太子皇太子妃皇太孫皇太孫妃親王親王妃内親王王王妃女王を謂う。
第三十一条
 皇子より皇玄孫に至るまでは男を親王女を内親王とし五世以下は男を王女を女王とす。
第三十二条
 天皇支系より入て大統を承くるときは皇兄弟姉妹の王女王たる者に特に親王内親王の号を宣賜す。
第三十三条
 皇族の誕生命名婚嫁薨去は宮内大臣之を公告す。
第三十四条
 皇統譜及前条に関る記録は図書寮に於て尚蔵す。
第三十五条
 皇族は天皇之を監督す。
第三十六条
 摂政在任の時は前条の事を摂行す。
第三十七条
 皇族男女幼年にして父なき者は宮内の官僚に命じ保育を掌らしむ事宣に依り天皇は其の父母の選挙せる後見人を認可し又は之を勅撰すべし。
第三十八条
 皇族の後見人は成年以上の皇族に限る。
第三十九条
 皇族の婚嫁は同族又は勅旨に由り特に認許せられたる華族に限る。
第四十条
 皇族の婚嫁は勅許に由る
第四十一条
 皇族の婚嫁を許可するの勅書は宮内大臣之に副署す。
第四十二条
 皇族は養子を為すことを得ず。
第四十三条
 皇族国境の外に旅行せむとするときは勅許を請ふへし。
第四十四条
 皇族女子の臣籍に嫁したる者は皇族の列に在らず但し特旨によりその内親王女王の称を有せしむることあるべし。

 
第八章 世伝御料

第四十五条
 土地物件の世伝御料と定めたるものは分割譲与することを得ず
第四十六条
 世伝御料に編入する土地物件は枢密顧問に諮詢し勅書を以て之を定め宮内大臣之を公告す。

 
第九章 皇室経費

第四十七条
 皇室諸般の経費は特に常額を定め国庫より支出せしむ
第四十八条
 皇室経費の予算決算検査及びその他の規則は皇室会計法の定むる所に依る。

 
第十章 皇室訴訟及懲戒

第四十九条
 皇族相互の民事の訴訟は勅旨に依り宮内省に於いて裁判員を命じ裁判せしめ勅裁を経て之を執行す。
第五十条
 人民より皇族に対する民事の訴訟は東京控訴院に於いて之を裁判す但し皇族は代人を以て訴訟に当たらしめ自ら訴廷に出るを要せず。
第五十一条
 皇族は勅許を得るに非ざれば拘引し又は裁判所に召喚することを得ず
第五十二条
 皇族其の品位を辱むるの所行あり又は皇室に対し忠順を欠くときは勅旨を以て之を懲戒し其の重き者は皇族特権の一部又は全部を停止し若しくは剥奪すべし。
第五十三条
 皇族蕩産の所行あるときは勅旨を以て治産の禁を宣告し其の管財者を任ずべし。
第五十四条
 前二条は皇族会議に諮詢したる後之を勅裁す。

 
第十一章 皇族会議

第五十五条
 皇族会議は成年以上の皇族男子を以て組織し内大臣枢密院議長宮内大臣司法大臣大審院長を以て参列せしむ
第五十六条
 天皇は皇族会議に親臨し又は皇族中の一員に命じて議長たらしむ。

 
第十二章 補 則

第五十七条
 現在の皇族五世以下親王の号を宣賜したる者は旧に依る。
第五十八条
 皇位継承の順序は総て実系による現在皇養子皇猶子又は他の継嗣たるの故を以て之を混ずることなし。
第五十九条
 親王内親王王女王の品位は之を廃す。
第六十条
 親王の家格及びその他此の典範に抵触する例規は総て之を廃す。
第六十一条
 皇族の財産歳費及び諸規則は別にこれを定べし。
第六十二条
 将来此の典範の条項を改正し又は増補すべきの必要あるに当ては皇族会議及び枢密顧問に諮詢してこれを勅定すべし

 
 

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