S・ワクセル

『ベーリングの大探検』
S・ワクセル(平林広人訳) 『ベーリングの大探検』
世界教養全集23, 平凡社, 1961
 
S・ワクセル (Sven Waxell, 1701~1762) はスウェーデン人で、ロシア海軍に入り1733~49年のベーリングの探検航海で副官を務めた。

探検の一環として、1739(元文4)年には日本遠征が行なわれ、スパンベヤ司令の第一船「天使長ミカエル」号とワルトン副指令が率いる第二船「希望」号がはぐれ、別々に日本人と接触した。
 


元文の黒船 ― 仙台藩異国船騒動記

 

すると二隻の漁船がこぎ寄せてきた。漁民が船に上がってきて、新鮮な魚、米、大きいタバコの葉、塩漬けにしたキュウリなどをはじめいろいろな小さい売り物をひろげた。

だがそれを売ろうとするのではなく、水夫たちに、何か小さい持ち物と交換してほしいという態度をして見せるのであった。彼らの交易態度はすこぶる合理的で、眼識も相当に高いものであった。

(p.217)

 

スパンベヤは、日本人の観察とその形態をつぎのように描いている。

日本人は、なよなよしていて発育不十分な感じで、身長だけは中背に見えるが、これならば正しくたくましい壮者というような男に遭遇することはほとんどなかった。

(p.218)

 

そのはじめて来た舟艇は、ふたたび姿を現した。こんどはその船にいろいろな細かな品物を積んできて、それを買わせるか、またはロシアの品物と交換したい様子をして見せた。なかでも異彩を放ったものは、漆黒の染め味を出しているリンネルであった。司令も世界中これほどすばらしい染め色の出ているものを見たことがないといっていた。

(p.219)

 

スパンベヤ司令は、その後さらに数日にわたって日本の沿岸をまわって、つぶさにその実態を観察した結果、この国は容易ならない国であることを知った。彼は、よくもこの国を目ざして来たものと喜びにたえなかった。

その一端をあげてみるとしても、まずその無数の船舶を見ただけでもわかることで、ヨーロッパで見られるものと比較しても、けっして見おとりのしない優秀なものが少なくない。同じく貨幣を収集してみても、十分にその優秀な文化を反映している。

その他はいうにおよばず、その能力はあなどれない国民性をもっている。

彼は口をきわめて、よくもこの国に来ることができた、日本こそ、やがて親交を結ぶべき国であると叫んだ。

(p.219)

 

欧米から見た日本