『1984』のアナザーサイド

 「マスコミに載らない海外記事」さんで「拷問」に触れた翻訳記事を目にし、『1984』について以前から思っていた事を書く気になりました。
 
『不屈の男 アンブロークン』: 何かに仕える凡庸なハリウッド作品
2016年2月 7日 (日)
 
 『1984』が、全体主義に支配されたディストピアが描かれた作品だということは広く知られていますが、本題に入る前に、「全体主義」=「共産主義」と短絡的に捉えている人が結構多いように見受けられるので、ワタシなりの見解を述べたいと思います。

 『1984』はロシア革命の皮肉であり、「ビッグブラザー」と元同志である「ゴールドスタイン」の対立は、レーニン亡き後のスターリントロツキーの対立を連想させ、ふたりとも「共産主義革命」というスタートラインに立ちながら、一方は「全体主義」、もう一方は「トロツキー主義」へと進む方向が分かれます。
 
トロツキズム – Wikipedia
 
 で、「ビッグブラザー」と「スターリン」が重って見えるワケですが、それはアレとして、「グローバルな連帯」を頻繁に口するワタシは、トロツキーの考えに近いのかも知れませんし、グラムシの「ヘゲモニー論」はトロツキーの思想の発展形とも考えられます。

 「共産主義」はマルクスの社会観察から導き出された「理想社会」の在り方を示し、その実現に向かう実務的な過程で「主義」が暴走し、「異分子の粛清」といった極端な行動に走ることもあるワケですが、それをもって「共産主義」=「全体主義」とするのは短絡的であり、ザックリ言うと、一部の「イデオローグ」による政治指導が全体主義となり、それとは別に、個人の連帯=ヘゲモニーの拡大によって社会全体の改革を目指すのがグラムシの思想=「ヘゲモニー戦」です。
 

 
 ヘゲモニーの拡大には各人の意識改革(個人革命)が不可欠であると同時に、ヘゲモニー(合意)を基盤とした社会には、『1984』のような「監視体制」は不要であり…

本来の人間社会

…が出現するという話。

 重要なのは各人の意識を高めることなワケですが、人間(ワタシも含めて)には…

楽な方に流されやすい

…という「悪の種」が内在し、そうした「人間の本性」ハンナ・アーレントは…

凡庸な悪

…と呼んだワケです。
 
ハンナ・アーレント – Wikipedia
 
 「戦争責任者の問題」伊丹万作氏も同じことを指摘しており、楽な方に流される=進んでだまされることを選んだ当時の日本人の精神怠惰が、「全体主義社会」の元凶なのだと喝破します。
 


「はだしのゲン」 – より

 
 ちなみに『日本国憲法』に…「憲法の保障する人権と自由は、国民が不断の努力でこれを守らなければならない」…と条文化されているのは、国民が惰性に流され、同じ過ちを繰り返すことを予期し、それを戒めているのではないか?と感心する次第です。はい。

 「グローバルな連帯」を口にするワタシは「グローバリスト」であり、「グローバリスト」=「共産主義者」=「全体主義者」ですか?
 
マイナス金利導入の裏に隠されている国際決済銀行の罠
カレイドスコープ Fri.2016.02.05
 
 チガウでしょ?チーバーも書いているように…

人間は普遍的存在

…であって、人間の普遍性を勝ち取る「武器」として「共産主義」があるワケです。

「文化的個別主義」に反対する左翼の武器 普遍主義
(ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版2014年5月号)
ヴィヴェク・チーバー
 
 「~主義」というのは好きではありませんが、便宜上「共産主義」という言葉を使うとして、重要なのは「イデオロギー」を守る事よりも「人間性」を守ることであり、個人の「人間性」を否定する「全体主義」と、資本家の搾取を否定する「共産主義」とを同列にはできません。

 で、前置きはこれくらいにして『1984』に話を戻すと、「全体主義」の描写と平行して描かれるものに…

「苦痛」

…というテーマがあります。『1984』の主人公スミスが受ける数々の「苦痛」の描写は生々しく、そして作品の中核をなしていると言えます。

 「ビッグ・ブラザー」に反抗した運動家およびスミスは、最終的に「全体主義」に屈してしまうワケですが、その直接的な原因になったのは…

拷問による苦痛

…に他なりません。つまり彼らは「肉体的」にファシズムに屈したのであり、「肉体」と「精神」は切り離すことができず、「拷問」というのもが如何に「人間性」を蹂躙するかというコト。

 作者であるジョージ・オーウェルは、植民地警察官としてミャンマーで勤務した経験があり、ひょっとしたら?現地で反政府(反英)分子を逮捕して拷問した経験があるのかも知れません。

 で、そうした経験が『1984』での拷問シーンや、スミスが感じる苦痛を生々しくしているのではないか?

 「拷問」=「肉体の苦痛」も、人間が普遍的であるように世界中に普遍的に存在する「非人道的行為」であり、アメリカの拷問は「良い拷問」で、ロシアの拷問は「悪い拷問」などという区別は無く、それを「日本国憲法」では…

公務員による拷問は「絶対に」これを禁止する。

…としていますが、自民党の改憲案では…

公務員による拷問は禁止する。

…と、トーンダウンしてますw。

 このことは自民党が目指すのは「全体主義国家」であることを示しているようで、「肉体的苦痛」に弱いワタシとしては…

自民党はヤヴァイ!

…と見做さざるを得ないワケです。はい。
 
 
 
 

人間ナメんなよ!

でわっ!

 
 

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