時代の突破口

 価値観の多様化は生活スタイルにも多様性をもたらし、必然的に地域コミュニティーの求心力が低下する要因のひとつになっています。そして、こうした社会の変化に漠然とした「不安」を抱いている人々が心の平静を保とうと旧来の価値、権威に立ち戻ることで保守的な社会傾向が強まることは十分予想され、さきの参議員選挙や都知事選挙の結果も、そうした潜在意識によるものかも知れません。

大衆は愚かだ。

…と切り捨てるのは簡単ですが、時代の変化に則した「新しい価値」を「野党」は創造したのか?となると大いに疑問です。

 特に「民主党」…現在は「民進党」と党名を改めましたが、一度は国民の信託を受けて政権を担いながらその中身は自民党と変わらず、大いに失望させられたものです。そうした過去の失態を誤魔化すために看板を架け替えてお茶を濁そうという気なら、子供だましでしかありません。

 「共産党」は「共産党」で党名を頑なに変更しないのはスジが通っていますが、安保闘争や学生運動の崩壊により「共産主義」に対するイメージが悪く、これを払拭するのは並大抵の努力では済まないでしょう。そういえば?最近スプートニクで日本共産党を取り上げていました。

勢力を伸ばす日本共産党の秘密はどこに?
sputnik 2016年08月27日 08:33(アップデート 2016年08月27日 17:10)

 記事に書かれているように欧州の共産党が軒並み凋落しているのだとしたら、日本と同様に社会の多様化に対する不安が大衆の保守化衝動を誘発しているものと考えられます。つまり政治におけるストックホルム症候群は世界中に広がり、各地で保守化=右傾化が進行しているワケです。
 

ストックホルム症候群 – Wikipedia
 
ストックホルム症候群(ストックホルムしょうこうぐん、英語: Stockholm syndrome)とは、精神医学用語の一つで、誘拐事件や監禁事件などの犯罪被害者が、犯人と長時間過ごすことで、犯人に対して過度の同情や好意等を抱くことをいう。

 
 ところでG.オーウェルはイギリスにおける「ナショナリズム」を分析し、その小論文のなかで自己を埋没させる「対象」と「勝利」の快感を求める心理は、人間が持って生まれた「傾向」であると書いています。

「ナショナリズムについて」
G.オーウェル (1945年)

 ストックホルム症候群にも類似性が見られ、犯人を受け入れる=犯人の価値観と一体化する=自己を埋没させる…ということ。

 話を戻すと、旧来の価値観に変わる新しい価値観を提示できないが故に大衆は保守的な傾向に流されるワケで、選挙のたびに支持を訴えたところでやってることが党利や政権に固執しているようでは…

自民党とどう違うワケ?

…という話で、「より良い社会」を目指すのであれば「より良い価値観」が必要とされるのに、それが無いのが「共産党」に限らず多くの野党の根本的な問題だというコト。

 ワタシとしてはマルクスとエンゲルスの社会観察が間違っているとは思いません。チーバーが指摘したように「普遍的」なものだと思っています。

「文化的個別主義」に反対する左翼の武器・普遍主義
ヴィヴェク・チーバー (ニューヨーク大学社会学部準教授)

 ただしこの「人間の普遍性」は旧来の権威体系をも否定するものであり、社会の仕組みを根本から変えてしまうでしょうし、そうなると「政党」すら意味を持たなくなるでしょうから、それは「共産党」にとっても自殺行為だというコト。

 したがって旧来の権威体系を温存しながら「革新」を唱えるという矛盾した状況は、早い話が「権力の奪い合い」の方便だと大衆に見透かされ、日本に限らず「共産党」のへの支持が伸びない最大の理由と考えられます。

 そうしたなかでも「日本共産党」が僅かながらも支持を伸ばしている背景には、やはり福島第一原発事故があります。原発が爆発事故を起こすという信じられない状況に直面したことと、その後に見られた専門家、知識人たちの迷走ぶりに従来の権威、価値は一旦崩壊したと言え、その分多くの日本国民が「人間の普遍性」に目覚めたことで「日本共産党」への支持が微増していると推察されます。ただし「共産党」にしてみれば「両刃の刃」であることは前述したとおりです。
 

9. 被告のその余の主張について
 
(前略) 他方、被告は本件原発の稼動が電力供給の安定性、コストの低減につながると主張するが、当裁判所は、極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等とを並べて論じるような議論に加わったり、その議論の当否を判断すること自体、法的には許されないことであると考えている。このコストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている。
 
 また、被告は、原子力発電所の稼動がCO2排出削減に資するもので環境面で優れている旨主張するが、原子力発電所でひとたび深刻事故が起こった場合の環境汚染はすさまじいものであって、福島原発事故は我が国始まって以来最大の公害、環境汚染であることに照らすと、環境問題を原子力発電所の運転継続の根拠とすることは甚だしい筋違いである
 
大飯原発3、4号機運転差止請求事件判決要旨

 
 ま、「共産党」についてアレコレ言いたいワケではなく、要は旧来の価値に変わる新しい価値を創造、もしくは提示できない限り…

世界は何も変わらない

…というコト。

 そしてそれには「人間の普遍性」に多くの人が目覚めることが不可欠なワケですが…

人間回帰

…への道はまだまだ遠く険しい道程のようですw。
 

 

 もしあなたがロシアを憎み恐れ、アメリカの富と権力に嫉妬し、ユダヤ人を嫌悪し、イギリスの支配階級への劣等感を抱いていたとしよう。頭で考えるだけで簡単にそういった感情を取り除くことはできないだろう。しかし少なくともそれらの感情を持っていることを自覚し、それに自らの思考が汚染されないようにすることはできる。感情的な衝動からは逃れることはできない。おそらくそれは政治的な行動を起こすときには必要にさえなるものである。現実の受容と、それらを共存させなければならないのだ。だが繰り返すがそれには倫理的な努力が必要だ。そしてこれこそが私たちの時代に残る大変な課題であるにも関わらず、現代のイギリス文学を見れば、私たちのうちでその備えができている者のなんと少ないことか。

「ナショナリズムについて」 G.オーウェル(1940年)

 
 だたし、あまりのんびり構えている余裕はありません。ストックホルム症候群のまま自滅するのが早いか?それとも目覚めた人が増えるのが早いか?を悠長に眺めていては社会的犠牲者を増やすだけですし、後の世代に対して不誠実であり人間性の喪失でしかありません。
 

いま我々を覆っている不幸は
やがては過ぎ去る「貪欲」であり、
人類の進歩を恐れる者たちが
撒き散らす「ニガリ」なのだ。
憎しみは消え…「独裁者たち」は去り…
彼らに奪われた「力」は
必ず我々の手に戻る。
だから「人間性」を手放さない限り、
 
「自由」が滅びることはない!
 
映画 「独裁者」 / 製作 : 1940年アメリカ
監督・主演 : チャールズ・チャップリン

 
 急務とされるのは「目覚めた人」をひとりでも多く増やすことであり、こうした人たちこそが時代の突破口になるという話。
 
 
 
 

人間ナメんなよ!

でわっ!

 
 
追記:

現在日本で起きていることは、すべてCSISの2012年の報告書に目を通すことで理解できますし、今後の方向性の予測もつきます。

(再掲)IWJ特報 75号 ― CSIS『第3次アーミテージレポート』全文翻訳・完全注解〜米国からの命令書を読み解く(1) 2013.2.3
(文責/岩上安身、協力/野村佳男・佐々木隼也・大西雅昭・安斎さや香)
 
 

広告