CSIS日本講座 2012報告書

■ 経済と貿易
 
 2011年11月、野田首相は、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)加入のための事前協議に日本が参加することを発表した。TPPは、完全に実現すると、世界貿易の40パーセントを占め、大西洋から太平洋をまたいで少なくとも11か国が加入する。さらに、他の地域的なFTAとは異なり、TPPは、包括的かつハイレベルな、法的拘束力をもつ自由貿易協定として際立っている。昨年の発表以来、日本のTPP加入への歩みは遅い。争点の幅広さや交渉関係者の数のため、時間がかかり、細部への配慮も必要となる。しかし、交渉への参加を遅らせないことが、日本の経済安全保障上の利益になる。また、日本が最も重要な同盟国とFTAを締結していないことは不条理であり、日本が交渉に参加することを我々は強く奨励する。米国側としては、交渉プロセスと協定案にもっと光を当て、透明性を増すべきである。
 

日米経済関係の活性化と確保
 我々は、米日経済関係を強化し、確固たるものとするためにTPP討議に加え、骨太で革新的な多国間自由貿易協定を提案する。日本はメキシコとFTAがあり、カナダとのFTAを拡大している。この2国は米国にとって最重要な貿易相手であり、世界最大のFTAであるNAFTA(北米自由貿易協定)の参加者でもある。米国、日本、カナダ、メキシコがCEESA(※Comprehensive Economy, Energy and Safety Agreement:包括的経済・エネルギー・安全保障協定)に加盟すれば、実質上は米日が、経済・安全保障・戦略的エネルギー関係を拡大、深化させることになる。日本には重大なエネルギー・安全保障上のニーズがあり、なおかつ投資するための資本がたっぷりある。日本は、国内での経済的損失と人口統計上の挑戦(人口減少問題)による損失を補うために、海外投資による財務・金融リターンを増大・活性化する必要がある。他方、米国と北米の広域には、天然ガス開発のチャンスがいっぱいあふれているというのに、開発のためのインフラ投資の資金難を抱えている。
 
CEESAには、次の3つの柱がある。

  1. 日本は、NAFTAとの連携協力を目指し、メキシコとの既存FTAと並んで、カナダと米国とのFTA交渉を行う。NAFTA加盟国の各国と共に、日本はFTA(条約の)加盟[調印]国として、北米にあるエネルギーへの自由なアクセスを(拘束を受けずに)許可され、かつ、北米におけるインフラと戦略的エネルギー投資機会を得るにあたって、有利な立場に置かれるだろう。
     
  2. 米国は、米日安全保障同盟の一部として、LNGガスと他の形状の“戦略的エネルギー”供給を、日本輸出用に保証することを誓約する。
     
  3. 日本は1,000億ドルから2,000億ドルを、エネルギー開発を景気づける目的で北米に投資することを誓う。これには、天然ガス、石油、石炭、風力、太陽、次世代の核開発費が含まれる。

 我々は、CEESAが現行の貿易政策の発展とは矛盾することなく、また、それ(現行の貿易政策)からの離脱を意味するものではないと信じる。日本は、すでにメキシコとFTAを締結し、カナダとFTAを交渉する意図を発表した。したがって、次のステップは、日本の最も重要な同盟相手であり、最大の取引および投資のパートナーである米国との交渉に向け邁進することである。カナダ、メキシコ、そして米国とのFTAは、日本の経済、エネルギー、および金融の安全保障において、我々が思いつける他のどの手段より役立つだろう。これら3つのFTAは、日本のエネルギー供給を保護するだけでなく、米国、カナダ、およびメキシコの農業製品への自由貿易アクセスも日本に付与し、結果として安定した食物供給を確保することになる。日本の農業人口は急速に減少しており、日本の人口は老齢化し、農民の平均年齢は66歳を超えた。このような展望では、日本は農業貿易政策の調整を延期する余裕がない。すべての関係者が、持続不能な防衛的貿易戦略ではなく、真の経済と食物の安全保障という観点で考察すれば、FTAを妨害する残りの農業障壁は容易に克服できる。大韓民国(ROK)が米国とのFTA交渉で成功できるなら、日本もできる。
 
 CEESAに調印すれば、日本は、高度な工業化社会の急速に成長する部分と根本的に統合され、TPPによって具体化される先進経済と新興経済の架橋を支援し、世界最大の自由貿易圏を構築することで世界的な経済成長を促進することになる。 (以上和訳:斉藤みどる)

目 次

 
 

広告