『ユダヤの告白』 

第一章:
攻撃目標は日本である

 
 
■ 日本攻略のチャンス

1987年3月23日、バートン・S・レヴィンソン全米会長とアブラハム・フォックスマン副理事、その他のADLの一行が、ワシントンで日本の松永駐米大使と会談した。彼らが日本大使と会談した目的は、日本での反ユダヤ的な書物や記事の増加に関し、日本政府に対して抗議することにあった。ADLは席上、『世界征服を目指すユダヤ戦略』や『ユダヤが解ると世界が見えてくる』といった本の出現に戸惑っていると伝えた。その際、この強力なユダヤ組織は日本に対していくつかの抗議を行っている。

ADLはまた、自分たちが偏見と闘ってきた経験とノウハウを日本政府に提供すると申し出た。ADLは反ユダヤ書物が増えつつある事態に対処する方法として、日本の政府当局が教育や情報の面で何らかの手を打つべき事を申し入れた。
 

 
その会談の席上、ADLの一行はさらに、日本がイスラエルに対するアラブのボイコットに同調し、それを依然として堅持している事に抗議した。西側同盟の一角を占めている二つの民主国家が、正規の経済、外交関係を持たないでいるのは「異常事態」だと、アブラハム・フォックスマンは日本側の出席者に告げた。

以上の文章は、ADLが出しているインターナショナル・レポートの1987年4月号に掲載された『日本と反ユダヤ主義…反ユダヤ書籍の流行』と題する論文から引用したものである。これはADLが世界的なネットワークを使って対日揺さぶり攻勢に出たことを示峻している。その論文は日本大使との会談からわずか一ヵ月後に発表された。これは非常にソツのないうまいやり方である。日本大使や日本政府が何と言ったにせよ、実際のところADLは日本を標的にした作戦計画の着手をすでに決定してしまっていた。ADLは日本に対して「宣戦布告」をしていたのである。

我々が彼らの企みを暴くのは大変だった。「日本叩き」計画が進んでいたことは我々にも分かっていた。ワスプ(WASP)の同調者と一緒になったユダヤ系投資銀行グループは、すでにカーター政権時代から当時のロバート・シュトラウス米通商代表主導の下で、「日本叩き」計画を立てていた。レーガン政権がスター卜するころには、この作戦に着手する準備は整っていたのである。

この作戦実行の直接の引き金になったのは、アメリカが債権国から債務国に転落した事であった。ユダヤ系投資銀行を中心としたグループは、それまではアメリカから資金を巻き上げてきた。しかしアメリカの債務国への転落を機会にその目を日本に向け始めたのである。ADLが日本への活動を開始したのもまさしくこの時であった。ADLの宣戦布告は単なるプロパガンダではなく、二段階の作戦に基づく行動を準備しつつあった。
 
 
■ 出版社ヘの攻撃

「宣戦布告」に至った彼らの第一段階の計画は、アメリカが債務国に転じた事が発表されたその時に当たる1985年に着手された。ADLは国際問題部の中に日本を監視する部署を設けた。現在、その部署の責任者はケネス・ヤコブソンである。われわれが密かに入手したインタビュー発言の中で、ヤコブソンは日本がなぜADLの行動計画の対象になったかについて次のように述べている。

「日本で数多くの反ユダヤ書籍が出版されているばかりか、その中にはべストセラーになっているものまであるということを知ったわけだ。だから我々は行動を起こした。この件で報告書も書いた、日本側の代表者とも会ったし、アメリカの議員にもこの問題を取り上げてもらった。…いいかい、日本にはほとんどユダヤ人が居ないんだよ。だからこそ、我々としては注意して事を進めなければならないわけだ…」

ADLはユダヤ問題を扱った日本の出版物のうち、2、3の著作に注目した。日本でべストセラーとなった宇野正美著『ユダヤが解ると世界が見えてくる』は、ADLやイスラエルの人々の間に人きな不安を引き起こした。この本が出版された後、日本にいたイスラエルのジャーナリストがイスラエル大使館と一緒になってまず「反ユダヤ書籍」問題を取り上げ始めた。宇野氏の本だけがこのような反応を引き起こした原因ではなく、この時期に国際ユダヤを扱った本や記事が数多く日本国内で出回り始めていたからである。
 

 
これを遡る1984年4月に、ADLの全米委員アブラハム・フォックスマンが、「アメリカのマスコミを牛耳るユダヤ人たち」という記事を掲載した『中央公論』誌の発行者、嶋中鵬二氏に対して抗議文を提出したことがあった。この時のフォックスマンの抗議がもとで、ADLはアメリカの大学に対して日本で何が起こっているかを研究するよう要請した。その研究のひとつが、ハーバード大学社会学部の博士課程の学生エバ・キャプランが行ったものである。彼女のいわゆる研究成果は、『日本の辞典に見るユダヤ人の定義』と題した論文の形で発表された。ADLの報告書によると、キャプランは日本人が「ユダヤ人」という言葉をどのように定義しているかを見るために16種類もの和英辞典を調べた。そして一部の定義は明らかに反ユダヤ的なものだったという。

日本の辞書は反ユダヤ的だとしてADLが声明を出したのを受けて、キャプランの研究結果を紹介する記事が、1984年7月10日付の『アサヒ・イブニングニュース』紙に掲載された。この件は、辞書を出版した小学館の編集者が「我々の定義が人種差別に当たるなど思いもかけなかった。」と語ったことで一件落着した。この小さな事例をもって、ADLは最初の作戦が勝利に終わったとみなした。
 
 
■ 日本の卜ップとの会談

日本の態度が弱腰であるとADLが判断したことが、この時の作戦の成功につながった。そして彼らはさらに次の一手を打とうとした。後でも触れるが、ADLというのは、世界中の反ユダヤ主義や不正に対抗するために作られた単なる「ユダヤ組織」などではない。この組織は実は、投資銀行家、見せかけの博愛主義者、組織犯罪者や国際的な麻薬密売人といった人々からなる、全世界の善意で素朴な数多くの人々を欺く大掛かりな秘密のネットワークなのである。それゆえ彼らが作戦を遂行していくためには、自分たちの真の狙い、すなわち組織犯罪のシンジケートを日本に導入することの隠蔽工作が極めて重要になる。

ヤコブソンは「我々としては日本にまだ問題はあるものの、その問題はある程度解消されたものと考えている。」と語り、日本での問題が収まりつつあるかのように振る舞った。彼はさらに統けて、1988年春に日本を訪れたADLの一行が日本のトップの人々と会談できたことを自慢し、「通産省や大蔵省、それに経団連の人々と数多くの会議を持つことができた。もともと我々一行は全国製造業協会と商工会議所の中の極めて重要なメンバーから構成されている。彼らは企業のトップの人たちである。」と語った。

ADLの訪日の本当の目的は、彼らの作戦の隠蔽工作をする事にあった。それ故、彼らは、先に述べた教育や情報分野での計画を、彼らの汚いトリックを隠す隠れ蓑のひとつに使おうとしたのである。彼らの「教育・情報」計画をさらに調べてみると、日本の政界、財界、学界の鍵を握る人物の調査は、彼らが日本にやって来る前にすでに進んでいたことが分かる。この事は、日本においてレべルの高い人々と会談できたというヤコブソンの発言からも窺うことができる。

人物の調査という言葉を使ったが、この場合、この言葉には特別の意味合いがある。つまり相手の強みや弱点を知るために、相手の能力を探る事である。諜報合戦において、このやり方は相手方に対して仕掛ける工作の手段を決定する為に欠かせないものである。そしてADLは、日本のエリートたちや国民が、アメリカの政策決定方法やその過程について、知識が欠けている事に対する批判に敏感であると判断した。したがって、アメリカの政策決定にユダヤ人が重要な役割を果たしているとして「ユダヤ人を非難」することは間違っているとADLが日本に指摘する事には、日本人のこの点に関する過剰なまでの心理を利用して日本側を困惑させ、あるいは恥じ入らせる事により日本側の譲歩を引き出そうという意図が存在するのである。
 
 
■ 誰がその手先となるか

「ユダヤ問題」との関連で日本の状況をさらに調べるために、ADLは一般の日本国民の調査を行い、その結果が、1988年11月の『日本の反ユダヤ主義 ‐ 調査研究報告』というレポートにまとめられた。この調査は東京にある日本のリサーチ・センターが行ったものだが、同センターはギャラップ・インターナショナル・リサーチ・インスティテュ-ト社の関連企業である。

この調査自体は特に目を引くようなものではないが、ただひとつ日本の学校でシェークスピアの『べニスの商人』を教えている事に、彼らが執拗にこだわっている点が注目される。このこだわりは、自分たちの本性が暴露されることを恐れる彼らの心情がはっきりと出たものである。ここにADLの気にしている事か何であるかを知る手掛かりがある。調査報告の中で彼らは次のように述べている。

「(日本人には)反ユダヤ文献、シェークスピアの古典、あるいは情報や金融の分野をユダヤ人が支配しているという見方などの中にあるユダヤ人観の特定のケースを考えていくことで、その影響を最小限に留めるような一般的傾向のある事がわかった。日本人の一部が外の世界(つまり非日本的なもの)を見る場合に狭い島国的プリズムを通して見る傾向があるのに対し、大半の人は、外の事など“私にはどっちもどっち、たいした違いはない。”と考えている。」

これ以外にも、ADLはその調査の中で「ユダヤ人」と、「イスラエル」に対する日本人の考え方、それも日本人が好意的な見方をしているかどうかの調査に焦点を当てている。そしてその調査レポートは最後に次のようなひとつの見解を述べている。

「大卒者や裕福な人々、それに少数ではあるにしても若年層の中に、ユダヤまたはイスラエル、あるいはその両方に対して否定的な見方をする人たちが増えてきている事は注目に値する。このような人たちというのは、他の人々に比べて影響力ある立場に就いているか、影響力ある立場に就く事を願っている人々である。」

実際にまずADLが計画しているのは、ユダヤ人あるいはイスラエルに対する日本人の見方を研究する事である。そしてそこから、ユダヤおよびイスラエルに好意的になったりする人や、すでに好意的になっている人物を日本人の中から見出して、ADLの手先に仕立てることを狙っている。言い換えればADLの汚い仕事を請負ってくれる日本人を探し採用することが、当初の目的のひとつなのである。そしてここに述べてきた事柄は、まさしくADLがアメリカ国内で今まで実行してきた方法に沿ったものなのである。
 
 
■ 現代のシャイロック、キッシンジャー

ADLがこのような工作を行うようになった背景は、その内容から言って非常に興味深いものである。端的に言えは、彼らはユダヤの銀行家がやっている事に対して、シェークスピアの『べニスの商人』に登場するユダヤ人のイメージを持たれることを恐れているのである。シェークスピアの古典の中で出てくる「ユダヤ人」という言葉は、ユダヤ人の銀行家の役割を意味したものである。つまりべニスの国王の代理で借金を取立てるのが彼らの仕事であった。
 

 
ユダヤ人銀行家シャイロックに関する記述の中で、彼が「肉1ポンド」を取り立てる話がある。彼はべニスの法廷で、現に存在する反ユダヤ主義に異議を申立てる一方で、借金を背負った者に対し情容赦無くその返済を迫る。その結果人々は、彼は一人の「ユダヤ人」以外の何者でもないとますます思うようになるわけである。実際、彼は国王の汚い仕事を請負っているわけだが、それによって人情を失っているばかりか、彼自身の人間としての尊厳をも破壊されてしまっている。絶対的権力を持つ国王の奴隷になり下がって、その地位を守るためなら何でもする。これがあの有名な劇の中でシェークスピアが言おうとした事である。

シェークスピアが描いた悲劇の主人公は、今の世界にも存在している。たとえばアメリカの元国務長官ヘンリー・キッシンジャーである。ロンドンやニューヨークの銀行が、シェークスピアが指摘したのと全く同じ意図を持ち、同じ目的のために活動していることは決して偶然ではない。1970年代初頭に、卑劣にもロッキード事件を利用して田中政権を倒した時にキッシンジャーの後押しをしたのも、このロンドンやニューヨークの金融勢力であった。

キッシンジャーはADLの幹部たちと共に活動している世界的重要人物の一人である。また彼は日本の政治を動かしてきた重要人物の一人でもある。彼が作った会社であるキッシンジャ-・アソシエーツ社が、ADLとは違ったレべルではあるものの、一部秘密工作を行うに際し決定的な役割を演じている事はほとんど知られていない。

1973年の中東戦争の後、キッシンジャーと彼に同調するユダヤ・ロビーは、日本がイスラエルに対するアラブのボイコットに参加しないようにと強い圧力をかけてきた。

1970年代半ぱに、日本が中東産油国との間で重要な話合いをしているときに、キッシンジャーは日本のマスコミに一連のスキャンダルを漏洩して日本政府に揺さぶりをかけた。

キッシンジャーとADLの狙いは、日本がアラブ産油国に何らかの支援をすれば、それがパレスチナ国家建設というさらに大きな支援に繋がり兼ねない旨を訴える事であった。

ロンドンのS・G・ウォーバーグ・アンドサンズ社から創設に際して出資を受けたキッシンジャー・アソシエーツ社は、今でも同じような工作に従事している。現に、竹下政権崩壊を招いたスキャンダル(リクルート事件)の漏洩に、キッシンジャー・アソシエーツ社が一枚かんでいたのではないかといった強い疑惑ないし噂が、ワシントンに存在する。

これが本当にせよ、あるいはまだ真相究明か必要なものにせよ、彼らがどのような工作をし、それに関与する人物や組織がこれをどう実行していくかについて、理解を怠ることは許されない。

とは言え、アメリカのユダヤ人が一枚岩だというわけではない。ユダヤ人の指導者たちの中には、このような不正工作にADLを使うことに反対している人もいる。しかし大部分の人々はこのような悪行に対し、面と向かって異を唱えることができないでいる。

国際的な問題においてユダヤ人の指導者の多くが何らかの役割を果たしていると、一概に言い切る事はできない。とりわけ国家や政府の破壊工作に関与する者についてはそうである。この点を本当に理解するには、2、3世紀昔にまで遡り歴史的背景を探ってみる必要がある。特定のユダヤ人グループが、自分たちの仕える国王から与えられた任務を実行していたのであって、ユダヤ人全部がそれを行っていたわけではない。この点をあまりに単純化してしまうと、彼らの思うツボにはまることになる。
 
 
■ 寄生虫的ネットワーク

いま世界中で大変革が起こっており、ロンドンやニューヨークに拠点を置く政治、金融勢力は、その力を維持するために懸命になっている。それに加え、彼らの「投機市場を意のままに動かす力」が弱まっているということもあって、対抗する全ての敵を打倒するには、その力は充分ではなくなりつつあると考えられる。

金融市場全体は、アメリカ経済に破滅をもたらしたジャンク債市場の崩壊からまだ立直っていない。そのため彼らの寄生虫的ネットワークは、新たな寄生先を探している。ところでこれらの勢力はその「投機」を続けるために必要な資金を、長い間に渡って違法な国際麻薬取引から上がる利益に頼ってきた。

彼らの投機的かつ暴利を貧る投資の大部分は、マネー・ローンダリング(資金洗浄)業務や、中米およびカリブ海地域、それに香港にあるオフショア銀行活動から入る資金によるものである。実際問題として、これこそが「自らの取引に精を出す」ために彼らに残された唯一の資金源である。事実、すべての人々をも含む全世界的金融状況は破産状態にあり、それが彼らをより一層自暴自棄でかつ危険な存在にすることになる。

必要な資金が手に入らなくなると、彼らは勢い世界で最も繁栄しているひとつの国に目を着けるようになる。その国とは日本である。だがこれは単に彼らの貪欲がそうさせたというだけのものではない。その貪欲の背後にあるものは、彼らの「高利で金を貸す」という主義である。これはシェークスピアの、『べニスの商人』の中で描かれた「ユダヤ人」となんら異なるものではない。ADLは高利を貪る銀行界に奉仕しており、ニューヨークやロンドンの銀行家たちの高利貸業務を擁護するために持てる力を行使している。これがADLが目下、対日攻勢に熱心な理由である。

アメリカ政府は日本に対して金融市場の自由化や規制緩和を求めているが、現在進行中のこの工作の第一目的は、それによって日本にニューヨークやロンドン流のやり方を導入できるようにする事である。
 
 
■ バブル経済の推進

自分たちの投機狂いを維持し続けることが彼らの望みであり、そのために彼らは金融「バブル(あぶく)」と呼ぱれるものを作り出そうとする。「バブル」の基礎になるものは、投資家を引きつける高金利と、手っ取り早く高い収益が上がることである。彼らは「生産をする」という経済のもう一つの面には全く関心を払わない。ただ例外的に関心を示すとすれば、投機熱を煽るために生産活動を縮小するときだけである。

投機家が取る行動の決め手は、不動産投機からはじまって為替投機に至るまで、すべての金融市場から規制を撤廃することである。それを行えば建物や建設、インフラ(社会基盤)などをべースにした実体のある付加価値とは全く無関係に、土地の値段を吊り上げることができる。投機家たちが初めの布石を打った後は、彼らの仲間である銀行家たちが金利を吊り上げる。それによってさらに多くの投資を投機に誘い込むことができ、現存する実体のある生産活動からその儲けを吸い上げることができる。この状態は「バブル」が破裂するまで続き、その後に不況がやって来る。

このような状況は、ADLやそれを支援する銀行家たちがアメリカ政府を思い通り動かし、威圧し、堕落させる立場に置く事になる。投機や不当とも言える高金利といった金融政策を後押しするアメリカ政府の権力が無ければ、借金を回収したり、金融バブルを持続させたり、あるいは新しい搾取の道を開いたりする事などができないからである。銀行家たちは時には最後の手段として、自国の政府を戦争に引きずり込み、それによって借金を回収したり、新たに市場を作り変えたりといった事までする。それゆえ彼らがアメリカ政府にその汚い真似をさせる事ができなければ、成功のチャンスは実際のところ皆無である。日本に対して、その抵抗を弱めたり揺さぶりを掛けて来たりする試みこそ、その工作の本当の目的なのである。

ブッシュ大統領と海部首相が金融市場の自由化規制緩和の件について何らかの理解に達したにもかかわらず、ウイリアム・ウェブスターCIA長官、ロバート・モスバッカー商務長官、カーラ・ヒルズ米通商代表などのブッシュ政権のメンバーは最近、大統領の欲するところとは別の言動を繰返している。この点について、ADLやそれを動かす人々は、大統領の個人的願いとは関係無く、日本を弱体化させ、自らの金融、貿易政策に日本を従わせるために大きな影響力を行使する事ができたのである。
 
 
■ 米国政府内ヘの政策誘導

アメリカの対日政策を作り上げるうえでADLが行っている政治的策略を理解するために、彼らが首都ワシントンのフォーシーズンズ・ホテルで1990年3月18日から20日にかけて開いた第十二回年次全国幹部大会を振返ってみたいと思う。

会場へはブッシュ政権のトップ・メンバーの講演を聞くためだけではなく、個人的な会合を開いたり、運動方針を検討したりするために160人近いADLの幹部たちが集まった。

大会は3月18日の日曜日に始まり、冒頭で全国幹部委員会会長のロバート・シュガーマンが演説を行った。

シュガーマンに続いてソ連からの亡命者ディミトワ・シムズが、ソ連の現在の情勢並ぴにソ連在住ユダヤ人のイスラエルへの移住の見通しに関する自己の見解を述べた。シムズはカーネギー国際平和財団の研究員であると同時に、「東西フォーラム」の名で知られる組織にも関係している。この団体は、ADLの幹部の一人であるエドガー・ブロンフマンから多額の資金を受けている。ブロンフマンについては後ほど詳しく述べることになるが、彼はADLの世界的な案件の決定に際し中心的役割を果たしている。

シムズの演説の後、ADLは幹部会に関する議題を提出したが、その内容は主として次の3点から成り立っている。

  1. シオニズムは人種差別主義だとする国連決議を破棄させる件
     
  2. シオニズムは「ユダヤ人の国家的解放闘争」だとする決議を国連に承認させる件、並びにソ連との関係改善を図る件
     
  3. 反ユダヤ主義の台頭に関する件

日本が問題にされたのは、最後の議題に関連してであった。

日曜夜の会議の後、広報担当大統領補佐官のボビー・キルバーグ、国家安全保障担当大統領補佐官でへンリー・キッシンジャーの会社、キッシンジャー・アソシエーツ社の元メンバーてもあるブレント・スコウクロフト、米国麻薬統制委員会委員長のウィリアム・べネット、保健省長官のルイス・サリヴァン、ヨーロッパ・ソ連問題担当国家安全保障会議(NSC)委員のコンドレッツァ・ライスといった人々など多数がホワイトハウスに集まった。そこでの議論の中心は先に述べた議題の初めの二つであった。

しかし訪日の旅から戻ったぱかリのロバート・モスバッカー商務長官が基調演説を行った月曜の夜から、日本問題が議論の中心として注目を集めることになった。モスバッカーの「ジャパン・バッシング」演説は、ADLの内部で高まっている反日の声にさらに火をつけることを狙ったものだった。不公正な日本の通商政策や投資政策に対する念入りに練り上げられた痛烈な非難を聞くに及んで、3年前にADLの一行を引き連れて日本人使と会談したことのあるバ-トン・レヴィンソンが、「日本で反ユダヤ主義が高まりつつある」というとんでもない攻撃を始めた。

力リフォルニアのビハリー・ヒルズの弁護士であるレヴィンソンは、主なユダヤ団体やシオニスト団体にはことごとく関係している。もともと広報マン・タイプのレヴィンソンは、モスバッカーと公の席上で日本と反ユダヤ主義を巡って議論するというやり方を利用して、日本がイスラエルと貿易しないことを理由にアメリカ政府が日本に対し厳しい姿勢で臨むよう仕向けた
 
 
■ 日本・アラブ関係に楔を

彼の仲間であるケネス・ヤコブソンは、レヴィンソン以上に突っ込んだ次のような意見を述べている。

「イスラエルの貿易問題は我々が深い関心を持っている事柄である。我々としても色々と努力してきたが、まだ十分ではない。ここ2、3年の間に日本の対イスラエル貿易は4倍に拡大した。これは我々の日本における影響力の成果である。

アラブを恐れるあまりイスラエルと取引をしようとしない日本人に対して、我々は4年ないし5年前から圧力を掛け始めた。そのような政策を取り続けることは彼らの利益にならないことを、我々は様々な方法によって日本人に悟らせるようにしてきた。つまりアメリカがその事で日本に対して制裁措置を取る事も有り得るというわけだ。

アメリカ政府に関して言えることは、アメリカ議会がある一定の段階で日本に対し、貿易問題について大きな不満を持つというやり方で圧力をかけることである。この点に関しては、議員の中でもマツイ(民主党、カリフォルニア州)や下院のステファン・ソラーズ(民主党、ニューヨーク州)といったところがろがそれに協力してきたし、国務省もこれに手を貸してきた。」

こういった形の工作が政府にもたらした効果の中でも特筆すべきものは、議会が日本に対して「肉1ポンド」を要求するようになった事である。そして間髪を入れず、アメリカのマスコミは大物議員やブッシュ政権閣僚の長々とした攻撃演説を取り上げるようになった。ADLやその仲間たちが狙っていたのは、日本の政府やビジネス界が心理作戦の猛攻撃に対して過剰反応を起こすことであった。日本が公然とブッシュ大統領を攻撃するようになることを彼らは願っていたのである。

もっとも、幸いなことに、マスコミが騒いだにも係わらず、ブッシュ大統領と海部首相は大きな衝突を避けることができた。しかしその一方で、貿易やその他の問題について日本の譲歩を引き出すべく、すでに彼らは事を運ぼうとしているのてある。
 
 

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