なぜカカオ農家は豊かになれないのか
CNN 2014. 02. 28 (Fri) posted at 09: 00 JST
チョコレートの需要は多いのに、なぜ、カカオ農家は豊かになれないのか。2012年 CNNは、チョコレート産業の裏にある西アフリカの「児童強制労働」の現実を探ったドキュメンタリー、「Chocolate’s Child Slaves」を放送した。それから 2年 … 再び現地に飛び、「サプライチェーン」の実態や「強制労働」が改善されているのか … また、農家が 十分な収入を得るにはどうすればよいのか取材した。
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チョコレート産業は、全世界 1,100億ドル規模の産業であるにも関わらず、カカオ農家の多くは貧困状態にある。正確な数字を測るのは難しいが、西アフリカに位置するコートジボワール共和国では、およそ 80万人にもおよぶ児童がカカオ産業に従事していると言われ、要因はすべて貧困によるものだ。
1980年当時のカカオの国際価格は、1t 当たり 3,750ドル (現在の価値で 1万ドルほど) であった。現在は 1t 当たりおよそ 2,800ドルだ。同様に、チョコレートバー 1本当たりのカカオの「価値割合」は、12%から 6%に「半減」している。つまり、農家の生産するカカオは必要不可欠だが、チョコレートバーの「生産コストにおける割合」は縮小しているのだ。
今日においては、チョコレートバーの収益のおよそ 70%がメーカーへ渡り、マーケティングや調査・開発などに用いられている。
2012年、コートジボワールでは政府による大胆な「改革」により農家から売られるカカオの価格を、最低でも「仲介費」などを含めた国際市場価格の 60%以上 … つまり、1キロあたり 1.5ドル以上とする「規制」を施行した。まだまだ 十分とは言えないが、「仲介」や「トレーダー」に左右されずに「将来の予測」を立て易くなったと言える。
チョコレート産業の「強制労働」撲滅を目指す「インターナショナル・カカオ・イニシアチブ」の担当者は、この「改革」によりカカオの値段が安定し、「最初のステップ」になったと言う。農家が貧困から脱するのに 十分な価格とは言えないが、将来的な「収入予測」が立て易くなった事は大きいということだ。
チョコレートメーカー大手の、ネスレ=ハーシー=クラフト=マースなどが過去 10年以上にわたり、「児童強制労働を改善する気が無いのではないか」という「悪評」に悩まされてきた中で、この「最低価格」の設定はカカオ産業に「新たな風」を巻き起こした。カカオ産業の裏にある「貧困」は業界に関わる全員の問題であるが、「誰の責任でもない」とされていたからだ。
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コートジボワールの「カカオ生産者」の平均年齢は 51歳 (平均寿命とそう違わない) で、「世代交代」が急務となっている。しかし「新しい人材」を育てるには「投資」が必要な上、若者は大都市で収入の多い「ゴム」や「ヤシ油」などの仕事に就くことを希望し、西アフリカでは「増える需要」に追い着いていない状況だ。
そして近年、「人口 13億人」の中国でチョコレートが口にされるようになり、新興国を中心に需要は飛躍的に上昇することが見込まれる。
CNN の取材班と同時期に、世界 86ヶ国 468のチョコレート工場を統括するネスレのエグゼクティブ・バイス・プレジデント、ホセ・ロペズ氏がコートジボワールを訪れていた。
世界のカカオの 3分の 1を生産する同国では、カカオ農家を支援して産業を成立させていくことが急務だ。そして、将来にわたりカカオ産業を「健全に維持する」ためには、サプライチェーンの底辺にいる農家に、「正しい知識」を教えることが唯一の道だ。
ネスレによる「カカオ農家の生活改善」に向けた取り組み「カカオ・プラン」では、10年間で 1億 2,000万ドルの投資を約束し、首都アビジャンのリサーチセンターで「病気に強いカカオ樹」の育成をしている。2016年までに 1,200万本の「苗木」を同国のカカオ農家に提供するのだという。また、地方でも児童の「強制労働」に関する教育を拡め、「学校」の建設を進めている。
幸いなことに、ネスレの「カカオ・プラン」の他にも米国食品大手カービルが取り組む「カカオ・プロミス」は、1,200の「学校」を設立し 6万戸の農家に、「児童労働の禁止」を含む「農業に関する教育」を実施している。政府や NGO … また、チョコレートメーカーが 一丸となって、産業の維持に向けた取り組みを始めている。
カカオ生産農家を「サポート」することで、企業は関連 NGO 団体から「認証」を受け、「認証」を得ることでカカオ豆に「プレミアムな価値」が生まれ、農家やコミュニティーがその「恩恵」を受ける。そして我われ消費者が「正当な生産プロセス」を踏んでいる製品 (認証済) を選んで買うことにより、「ココアノミクス」の仕組みが動き出す。
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カカオの「国際市場価格」は複雑な「中継ぎ」を通して決定され、そしてカカオ農家はその「最下位」に位置しているので、カカオ需要の「恩恵」を受けられていない。「業界」の在り方の再構築は大変難しく、また、ネスレをはじめとしたチョコレートメーカーは「チャリティー団体」ではなく、「株主」のためにビジネスを展開しなければならない「企業」だ。
一方でチョコレートは多くの人に愛され、メーカーは「より品質の高いカカオ豆」を必要としている。これは農家にとって「希望」であるはずだ。
コミュニティー全体が「貧困」から抜け出し、「児童強制労働」を根絶するのには時間がかかり、単純に「お金」で解決できる問題ではない。とはいえ、ネスレのような大手メーカーからの「金銭サポート」の継続は重要だ。
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CNN の名物「経済」アンカー、リチャード・クエストが見たチョコレート産業の現実「チョコの甘さを知らない子供たち(Cocoa-nomics)」は、「現代の奴隷制」の闇に迫る CNN の取り組み「CNN フリーダム・プロジェクト」の最新のドキュメンタリーです。 |
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