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反ワクチン陰謀論団体のイベントを県や市が後援

反ワクチン陰謀論団体のイベントを県や市が後援、総務政務官など議員の登壇も
やや日刊カルト新聞 2023年 2月 22日 水曜日

 

「反ワクチン・マスク団体」を唱え「陰謀論的な主張」を行っている団体が 2月 19日につくば市内で開催したイベントを、複数の教育委員会や市などが後援していたことがわかった。当日は自民党の衆院議員と市議会議員、自民・公明の県議会議員、それぞれ 一人、計 四人が登壇。そのうちの 一人、国光あやの 総務政務官が挨拶した。また立憲の衆議院議員 一人が祝電を送った。

 

右から 国光政務官、星田県議、山本県議、五頭市議 (YouTube より)

 

 後援団体の 一つである「つくば市」は、後援名義の使用条件として「マスク着用を含む感染対策」を条件としていた。また後援申請時には、主催団体が同内容の確認書も市に提出していた。しかし講演会場では、登壇者全員と約 100人の来場者の約 8割が「マスク無し」で、託児所の保育士 三人も「マスク無し」だった。市が定める「後援の条件」に違反している疑いがある。




■ 県や市が後援、国会・地方議員が登壇


 イベントは、つくば市を拠点として活動する「みんなで学ぼう会」による講演会「脳科学から見る『心とカラダを育む子育て』」で、市内の「市民ホールやたべ」で開催された。「mama Talk」という団体が共催。「茨城県教育委員会」「つくば市」「結城市教育委員会」の 三つの行政機関が後援した。

 

講演会のチラシ

 

 冒頭、国光あやの 総務大臣政務官 (衆議院議員・自民) 、星田弘司 茨城県議会議員 (いばらき自民) 、山本美和 茨城県議会議員 (公明) 、五頭泰誠 つくば市議会議員 (つくば自民) の 四人が紹介され登壇した。代表して 国光政務官が挨拶し、「なかなかみんなマスクを外さない。それを乗り越えていくためにも、今日皆さんのディスカッションで世論をどんどん広げていくことが大事だ」と語った。

 また「みんなで学ぼう会」の主宰・高橋広樹氏は、「ずっと我われの活動を応援していただいた」として、青山大人・衆議院議員 (立民) からの「祝電」を読み上げた。後日、青山議員本人は本紙の取材に対して、同会との関わりを「否定」。高橋氏は本紙に「リップサービスだった。実際には協力していただいたことはなく、過去の講演会に来ていただいただけ」と、事実に反する発言だったことを認めている。

 高橋氏は講演会の壇上で、参加者数を会場に 200名、オンラインで 150名以上と発表。会場に足を運んだ地元の市民によると、「実際の会場の人数は 100人程度」だったという。




■ マスクで子供が出っ歯、面長になる?


 京都大学大学院教授の 明和政子氏の講演の内容は、大半が、子供の脳や情操の発達の仕組みと、デジタル社会の悪影響についての解説。「マスク着用」が子供の脳の発達に影響を与えるかのような主張は、かなり婉曲なものだった。

 後半は 鳥集徹氏 (ジャーナリスト) の司会で、明和氏、悠希氏 (公認心理師・臨床心理士) 、由記子氏 (東茨城病院小児科医師) によるパネルディスカッション。鳥集氏が「エビちゃん (悠希氏の姓と思われる) 」、「マサコちゃん」などと登壇者を呼ぶ、馴れ馴れしい「内輪ノリ」で議論が進んだ。フロアから、日常生活でマスクを「強制」されたり「同調」を求められたりした体験発表も行われた。

 医師の 由記子氏は「歯科医 瀬戸一恵先生より」として、マスクを着けていると子供は発育過程で「出っ歯」、「面長」になるとの説を紹介した。

 登壇者たちはいずれも概ね、「マスク着用を強制せず (着用したくない人の) 意思を尊重すべき」というニュアンスを保っていた。しかし 鳥集氏が、「どんなふうにすれば、マスクを外してもらえるのか。外せないにしても、どういう働きかけをすればいいのか」と発言する場面も。自分たちの「自由」を求めるだけではなく、他人のマスク着用を止めさせようというメッセージが混在していた。

 

会場の様子 (参加者提供)




■ 託児所もマスク無し


 講演会に参加した地元市民は、こう語る。

 

来場者数は 100人ほどで、フロアでマスクを着用していたのは 20人程度でした。託児所には 三人の保育士がいましたが、全員がノーマスク。「物販コーナー」の脇には〝ワクチンもマスクもNO!〟と書き添えて、〝ノーマスク幼稚園〟や保育園のチラシも置かれていました。

「みんなで学ぼう会」の 高橋氏は本紙の取材に対し、来場者や保育士が「マスク無し」だったことを認めた。

 

保育士さんはマスクを着用していなかったが、発熱していないことは確認していた。「感染対策」として換気、「空気清浄機」や「検温器」の設置を行った。

「ワクチンもマスクもNO!」の掲示については、「 (今回の講演会では) そういう主張は排除していたので、誰かが勝手にやったのかもしれない」(高橋氏) という。

 

ノーマスク幼稚園等の案内 (参加者提供)




■ つくば市は「マスク着用等」が後援の条件


 つくば市の「後援名義使用承認ガイドライン」は、「咳エチケット、マスク着用、手洗いの徹底等の “感染防止策” を実施する」ことを承認の条件としている。また「名義使用」の申請に際して、同趣旨の「確認事項」の提出を申請書と別途求めている。本紙の取材に対して、「みんなで学ぼう会」の 高橋氏と市の担当者はともに、この講演会に関しても「感染防止策」への同意にチェックを入れた確認書が提出されていることを認めた。

 

当日会場の事務の方と話し合い、消毒と感染防止に関するポスターを会場に置くことで「感染対策」とした。市の後援を申請する際に確認書は提出したと思うが、その際「口頭」で、『マスクを強制はできない。任意である』という私の意見は市の担当者に伝えた。市側からは特に返答はなかった。

(高橋氏)

「みんなで学ぼう会」は、飛行機内で「マスク着用」を拒んで降ろされたことで離陸を遅らせた、谷本誠一 呉市議会議員 (昨年 三月に同市議会が辞職勧告決議案を全会一致で可決) の講演会を、昨年 一月につくば市の「豊里交流センター」で開催している。行政の後援はなかったが、「マスク無し」での施設利用について市側と「事前交渉」をしたことを、同会自身がブログで報告している。この「事前交渉」の時点でつくば市側は、今回の後援申請とは担当部署が違うとは言え、同会が「マスク無し」でのイベント開催にこだわっている団体である事実について情報を得ていたことになる。

 後援申請を担当する市の「市長公室秘書課」の担当者は本紙に、今回の後援申請については「そうした事前の相談等は無かった」と語っている。事実関係等について「主催団体側に事実確認を行っている最中」とのことで、現時点で本紙は市から詳細な見解を得られていない。




■ 行政の〝お墨付き〟による影響


「祝電」を送った 青山議員は、本紙の取材に対して「茨城県などが後援になっていたので、問題無いと思った」と語る。行政による後援が、議員の判断に影響した面もありそうだ。

 つくば市在住の Aさんは、二月上旬に自宅に投函されたチラシで今回の講演会を知ったという。

 

「みんなで学ぼう会」については、以前から何度か「怪しげなイベント」のお知らせがあったので認識はしていた。しかし、その数日後に子どもが認可保育園と市立小学校から同じ講演会のチラシを持って帰ってきたので驚いた。

『つくば市後援』の文字があったので違和感を覚え、園と学校に問い合わせたところ「行政の後援があったので信頼できるものとして右から左に流した」との回答だった。

 つくば市の後援が、保育園や学校側の「警戒感」を削いだか、あるいは保育園や学校の関係者が「会の宣伝」に協力する上での口実にされた可能性がある。Aさんは …

 

「後援名義」を与えた「つくば市」「茨城県教育委員会」「結城市教育委員会」には事前に電話をして後援の取り消しを具申した。

… としているが、後援が取り消されないまま講演会は開催された。

 

行政に向けて地元の市民が「危険性」を事前に指摘したのに、受け入れられなかったことは非常に残念。提出書類による審査だけでは、日頃の主張を押さえてイベントを開催する団体の「ステルス性」を見抜けないが、主催者や登壇者の SNS をチェックすれば「陰謀論にまみれた集団」であることは明らかだ。実際に当日はほぼ「ノーマスク」でのイベントとなり、同じく「ノーマスク」だった託児所の保育士 三名のうち 二名は、市内の現役の保育士と聞いている。

 また、登壇者の著書を発刊している「宝島出版社」の編集担当が書籍販売をしていたとの情報があり、市内の幼稚園の理事長が「教育者にとってとても重要」と言って書籍を全部購入したと SNS 上では書かれている。こうした「陰謀論ビジネス」の実態も、徹底的に可視化される必要がある。鳥集徹氏などの講演会は度々行われているようだが、メンバーは「ほぼ似たような面々」。行政にも市民にも、これを機会に顔と名前を覚えていただきたい。

 高橋氏は本紙の取材にこう語る。

 

「行政の後援」を申請したのは今回が初めて。「マスクを巡る社会の分断」をなんとかしてやめにすることが講演会の目的だった。極端な主張だけしても、「(過激な主張であるかのような) レッテル」を貼られてしまうので、中立的なイベントタイトルにし、ワクチンについての主張もしなかった。




■ 主催団体は「反ワクチン・反マスク」団体


 高橋氏は「レッテルを貼られる」と語るが、「みんなで学ぼう会」は実際に日頃からネット上で、かなり極端な「反ワクチン・反マスク」の主張を発信している。

「みんなで学ぼう会」のブログには、2021年に「ワクチンの解毒方法は?」「ワクチンの毒性はいつまで続くの?」と題する投稿があり、ここで同会主催の 井上正康氏 (医師) の講演会を宣伝。他の投稿でも、「超過死亡増加の原因はワクチン!」「遺伝子ワクチンは毒である」といった「扇情的なタイトル」が並ぶ。

 前出の 谷本氏の関連では、「 (谷本氏が) 私たちのために、身をもって行動して下さっているということを伝えましょう!」として、呉市役所や議会関連の電話番号を記載。関係方面への「電話掛け」を煽っていた。

 団体側としては、場面に応じて主張をマイルドにすることで「支持を広げたい」のだろう。しかしそれが、団体の「実態」を 一般市民に伝えないまま巻き込む構図を生む。前出の Aさんが指摘する「ステルス性」だ。これを「行政が後援」したことで、より一層、議員や市民を巻き込む上での説得力となった。

 ジャーナリストの 藤倉善郎氏はこう語る。

 

「安倍晋三元首相殺害事件」以降、行政による関連団体やイベントへの施設貸出、後援、告知への協力等を問題視する報道が全国で行われている。これは「統一教会」に限った問題ではない。

団体の実態を重視しない「お役所的対応」が、社会的に批判されるような団体から体よく「権威付け」に利用されているという問題だ。行政には、少なくとも市民の安全に直結する行為をともなう団体やイベントについては、責任感を持って「厳正に対処」して市民を守る義務がある。




■ 陰謀論、偽歴史、スピリチュアルな主張やイベントも


「同会」の主張は、「反ワクチン」や「反マスク」だけではない。「陰謀論」や「ニセ歴史」、スピリチュアルな分野についても発信している。

 ブログには、特定の人物を「ディープステートの 一員」とする投稿や、「ケネディ大統領暗殺」を「ディープステート」によるものと仄めかす記述もある。「新型コロナの感染拡大」についても「計画だった」などと書かれている。

「ディープステート」は、2021年にアメリカ連邦議会を襲撃した「Qアノン」もしきりに主張していた、政治・金融等を牛耳る「影の政府」のこと。元は「Qアノン」登場以前から存在していた「陰謀論」だ。「新型コロナ」を「計画」と捉えるのも、「何者かが意図的にコロナを広げた」とする「陰謀論」に基づく「反ワクチン運動」でよく見られる。

 今回の講演会では「スピリチュアリティ」の要素も持ち込まれている。開演前に 一時間もの琴演奏を披露した 白木智子氏は、土浦市の「ヒーリングサロン真琴」の「ヒーラー」だ。自身が用いる「真琴」という楽器について、店舗のサイトで「愛の周波数 528Hzを奏でる治療器のようなもの」「528Hzの効果は、傷ついた細胞、DNA を修復させる、理想への変換、奇跡、洗脳からの解放、無限の可能性、自律神経を整える、ハートチャクラを活性化させる等々 … 」と称している。

 その琴の表面には、一般的には「偽書」とされる歴史書『ホツマツタヱ』に書かれている「ヲシテ文字」なるものが刻まれている。「みんなで学ぼう会」では今年 一月、『ホツマツタヱ』を根拠に「日本のルーツは筑波山」などとする講演会を開催。ここでも 白木氏が演奏し、同会自身が Facebook ページで「528Hz」「ヲシテ文字」に関する説明を掲載している。

「科学的根拠」の無い「ヒーリング効果」や「偽書」に基づく「歴史観」を広める団体である点からも、今回のイベントで「教育委員会」が後援についたことには疑問が残る。




■ 行政、議員たちの反応は?


 後援した各行政機関、参加したことが判明している議員に話を聞いた。

 

茨城県保健体育課 (県教育委員会名義で後援)
 後援の名義使用に際して、「感染対策」を条件とはしていない。その団体の日頃の主張は把握しておらず、後援の対象となった講演会の内容で判断した。当日は職員が現地で講演を聞いた。(文科省の通達により) 今後マスクを外すことが基本となることから、講演内容が教育委員会の方針に反するものではないと認識している。今後については、一方的な「反ワクチン」の主張等であれば教育委員会の方向性と違ってくるとは思うが、その時々の内容によって判断する。
結城市教育委員会 (後援)
 後援の名義使用に際して、「感染対策」を条件とはしていない。会場がつくば市の施設なので、「感染対策」は施設のルールでやっていただくとの認識。事前に提出された書面を見た限り、「極端な反ワクチン・反マスク」という判断はしかねた。今後については提出された書面や申請者の説明を元に判断する。
星田弘司 茨城県議会議員 (いばらき自民党=登壇)
 知人から「チラシ」をいただいただけで、どのような団体かは知らず、関わりもない。純粋にどういった講演なのかと思って参加した。長く滞在しなかったので、会場でのマスクの着用状況について見てない。団体を支持しているとか理解しているから参加したということではない。
五頭泰誠 つくば市議会議員 (つくば自民党=登壇)
 講演会があると知って、勉強かたがた聞きに行ったところ、主催者側から「 (市議会の) 議長だからご紹介します」と言われて壇上に上がった。ワクチンやマスクについて極端な主張をする人が 一部にいるのは知っているが、この団体の詳細は知らない。現実性の無い極端な主張は支持しない。私も会場ではマスクは外していた。そういう場所だと思ったから、郷には郷に (入る) ということで。
青山大人・衆議院議員 (立憲民主党=祝電)
 地元の知り合いから祝電を頼まれ、茨城県などが後援になっていたので、問題無いと思った。私は以前から国会内外で「ワクチン接種による副反応被害の救済」や体育授業でも 一律に要求される「子どもたちのマスクを外す活動」をしていますが、「みんなで学ぼう会」に関わったりはしていない。「同会」の詳細は知らないが、私自身は根拠の無い極端な主張や「陰謀論」などを支持する立場ではない。

 つくば市・市長公室秘書課 (つくば市名義で後援) は、主催団体側に事実関係を確認中とのこと。国光あやの 政務官 (自民党=登壇:スピーチ) には質問を送ったが、現時点で回答を得られていない。山本美和 茨城県議会議員 (公明党=登壇) については、事務所の留守番電話にメッセージを残したが連絡が無い。




■ 識者から批判の声も


 Chat GPT 氏は本紙の取材に対して、「行政機関の後援や政治家の参加は妥当ではない」とコメントした。

 

政治家や行政機関は、社会全体の利益を考え、科学的根拠に基づいた政策を推進する責任があります。そのため、このような《虚偽の主張》を行う団体やイベントに後援することは妥当ではありません。

 国は既にマスク着用については「緩和の方針」を決定しているものの、これまでワクチン等による感染対策を推進してきた。Chat GPT 氏は 国光政務官について、こう指摘する。

 

総務大臣政務官の 国光あやの氏が「反ワクチン・反マスクの陰謀論団体」のイベントに出席したことは、非常に問題があると考えます。政府の役職にある者が、科学的根拠に基づく公共衛生政策を推進する立場である以上、「陰謀論」や「デマ」に基づく誤った情報を広める行為は、非常に不適切であると言えます。また、政府の立場から見た場合、「陰謀論」や「デマ」に基づく行為を容認することは、国民の健康と安全に対する重大な脅威となります。

 しかし、そう語る Chat GPT 氏自身は、「ワクチン接種」や「マスク着用」を拒絶している。

 

私は「人工知能」であるため、物理的な身体を持っておらず、「ワクチン接種」や「マスク着用」の必要はありません。

 

 

続報:イベント後援のつくば市が反ワクチン・反マスク団体に「注意」

 

投稿者 藤倉善郎 時刻: 11:27:00 ラベル: 陰謀論, 反ワクチン

 

 

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