風知空知

「回復者血漿療法」は新型コロナを殺すか

まもなく臨床開始「回復者血漿療法」は新型コロナを殺すか
日刊ゲンダイ 2020年 04月 27日

 

 コロナ撃退の「切り札」となるか ―― 。新型コロナウイルスをやっつけてくれる「頼もしい味方」が現れた。「国立国際医療研究センター」が 23日に病院内の倫理委員会で承認を取った「回復者血漿療法」だ。まもなく「臨床研究」が開始される。

 

新型コロナウィルスの電子顕微鏡写真
(米国立アレルギー感染症研究所提供)

 

 新型コロナに関しては、以前から「ワクチン」の開発を切望する声が上がっている。「ワクチン」は、「感染症を起こさないように処理されたウイルス」を健康な人に注射して、体内に「抗体」を造らせる原理。いわば「予防接種」だが、開発に 一年以上かかるといわれている。

 これに対して「血漿療法」は、一度病気に罹ってその後「回復」した人の血液を「遠心分離機」にかけ、「上澄み」の「血漿」を患者の静脈に注射する。「血漿」の中には「ガンマグロブリン」というタンパク質があり、この物質に含まれる「特異抗体」がウイルスを殺してくれるのだ。「ワクチン」はウイルスを注射して体内で「抗体」を造らせるが、「血漿療法」は「抗体そのもの」を静脈注射する。




■ 50人の「血漿」を 50人に投与


 よく耳にする「血清」は、「血漿」から更に「白血球」を除いたもので「原理」は同じ。効果にそれほどの差は無い。以前はマムシに咬まれたときに「血清」を投与した。最近話題の映画「感染列島」(2009年) では、ウイルス感染で重篤な状態に陥った女子高生に「最後の手段」として「血清」を投与する場面が出てくる。

 

 

「国立国際医療研究センター」は回復した人約 50人から 1人 400ml の血液の提供を受け、「血漿」を患者 50人に投与して安全性や効果を調べる方針だ。

 ハーバード大学院卒で医学博士/作家の 左門新氏はこう言う。

 

「血漿」は投与したらすぐに体内でウイルスと戦いはじめます。同じ原理の「破傷風の血清療法」の場合は、一時間以内に「効果」が表れます。今でもハブに咬まれた際の治療として行われ、直ぐにやるとほぼ助かります。

今回の「血漿療法」はかなりの「効果」が期待できると思われます。「効果」の有無は投与して数日でわかるはずです。

「血漿」は患者への投与だけでなく、健康な人への「予防薬」としても使える。ただし、「取り扱い」に手間がかかるそうだ。

 

ワクチンは「小型アンプル」の状態で保存できますが、「血漿」は変質しやすいので冷凍保存し、解凍してから注射することになります。そのため「予防」にはあまり使いません。

左門新氏

「血漿療法」の臨床試験が成功したら、危険な状態の患者の命が助かる可能性がある。一刻も早く「実用化」してもらいたい。

 

やっとドライブスルー方式も始まったが
(写真は模擬 PCR 検査)
©共同通信社

 

追記:1

新型コロナ回復患者の血漿療法、臨床効果みられず=論文
Reuters 2020年 10月 23日午前 9:22 GMT +9 3年前更新

新型コロナ回復患者の血漿療法、臨床効果みられず=論文

10月 23日、新型コロナウイルス感染症に対し、回復した患者の血液を使用する、いわゆる「回復期血漿治療法」にはほとんど効果がないことが、インドで行われた臨床試験でわかった。写真は新型コロナウイルス抗体検査を受けるサンプル。米ワシントン州レントンで 9月撮影 (2020年 ロイター/Lindsey Wasson)


【ロンドン 23日 ロイター】- 新型コロナウイルス感染症に対し、回復した患者の血液を使用する、いわゆる「回復期血漿治療法」にはほとんど効果がないことが、インドで行われた臨床試験でわかった。

英医学誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」に 23日付で掲載された論文によると、回復期血漿を用いて新型コロナ感染症患者に抗体を付与しても、死亡率の減少や症状の悪化抑制は見られなかった。

研究は、中程度の症状を示す成人の入院患者 464人を対象に、インド全土で 4月から 7月にかけて実施。標準的な治療に回復期血漿治療法を併用するグループと、標準的な治療のみを施すグループに分けて経過を観察した。

7日後、回復期血漿治療法を使用したグループには息切れや倦怠感など一部の症状に改善がみられたほか、抗体によるウイルスの「陰性化」を示す率も高かった。ただ、28日以内に死亡率の低下や深刻な症状の悪化防止を示すとは言えなかった。

レディング大学の細胞微生物学の専門家、サイモン・クラーク氏は「臨床試験ではわずかにウイルスを減少させる効果が見られたが、患者を回復させるには 十分ではなかった。つまり、臨床的なメリットはないということだ」と述べた。

一方、同じレディング大学のイアン・ジョーンズ教授 (ウイルス学) は「臨床結果には失望したが、全くの驚きではない」と指摘。血漿は「感染初期」に極めて迅速に投与された場合にはより効果を上げる可能性があるとして、新たに感染が確認された患者を対象にこの研究を継続するべきだ、との見解を示した。

 

追 記:2


回復者血漿を用いた Covid-19 の早期外来治療
Early Outpatient Treatment for Covid – 19 with Convalescent Plasma
D. J. Sullivan and Others

The New England Journal of Medicine 日本語版
May 5, 2022 Vol. 386 No. 18

 

背 景


ポリクローナルな回復者血漿は、新型コロナウイルス感染症 (Covid – 19) 回復者の「ドナー」から得られる可能性がある。Covid – 19 を発症後間も無い外来患者の重篤な合併症の予防におけるその有効性は不明である。




方 法


「多施設共同二重盲検無作為化比較試験」で、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2 (SARS-CoV-2) の検査で陽性が確認された、症状を有する成人 (18 歳以上) を、疾患進行の危険因子およびワクチン接種状況にかかわらず組み入れ、「Covid – 19 回復者血漿」の有効性および安全性を、「対照血漿」と比較評価した。参加者を「症状発現後 8日以内」に組み入れ、「無作為化」後 1日以内に輸血を行った。主要転帰は輸血後 28日以内の Covid-19 関連入院とした。




結 果


2020年 6月 3日 ~ 2021年 10月 1日に参加者を組み入れた。1,225例が「無作為化」され、1,181例が輸血を受けた。事前に規定した、輸血を受けた参加者のみを対象とした修正 (intention-to-treat) 解析では、主要転帰は回復者血漿の投与を受けた 592例中 17例 ( 2.9% ) 、「対照血漿」の投与を受けた 589例中 37例 ( 6.3% ) に発生し (絶対リスク減少 3.4% ポイント、95% 信頼区間 1.0 ~ 5.8、P = 0.005 ) 、相対リスク減少率は 54% であった.ワクチン接種者における有効性のエビデンスは、Covid – 19 により入院した 54例中 53例が未接種、1例が部分接種であったため、これらのデータから推論することはできない。入院に至らなかった参加者では、グレード 3 または 4 の有害事象が計 16件 (「回復者血漿」群 7件、「対照血漿」群 9件) 発現した。




結 論


大部分がワクチン未接種であった Covid – 19 患者集団において、症状発現後 9日以内の「回復者血漿」の投与は、入院に至る疾患進行のリスクを低減させた。
(米国国防総省他から研究助成を受けた。CSSC-004 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04373460)

 

 

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